日常の風景と文化の中に、この国の歴史が見える

  • ★★★ Excellent!!!

 話の流れだけをいえば、帝国から来た人を田舎の少女が案内するのを眺めている感じになるのだけども。

 この世界の空気感、文化、空気の匂いさえ感じられる表現豊かな文章に、歴史や過去の出来事を空想したり、これまでの人々の歩みを感じ取ったり。

 呪文や印などで発生する人知を超える事象の技をファンタジーでは魔法や魔術とするけれど、その概念を丁寧にひも解いていて、それがこの世界ではどのようなものなのかをさり気無く教えてくれ、神術と魔術が違っていく過程のドラマにも想像が広がります。そしてそのまま魔術を使って行った場合の結果も予感させて。

 土地の様子が鮮やかに描かれているから、読んでいるうちに気付けばラーノにくっついて、サヴァに案内を乞うているような気さえしてきました。
 二人の交流を見てると、異文化に触れるときの姿勢や考えの持ち方の参考にもなりそうです。

 読後には見知らぬ土地を少し知った気持ちになれ、この世界が異文化として自分の記憶に残るという、そんな感じのお話です。貴方も案内されてみませんか?