概要
その知識は、本来お前が持つべきものではない――
筆写師見習いの傍ら、地図制作を請け負うウネン。領主の依頼で仲の悪い隣領との境界を測量することになった彼女は、護衛を探すために訪れた酒場で一人の旅の剣士と出会う。
ウネンが過去に作った地図を手に、剣士は「測量技術を誰から教わった?」と詰め寄ってくる。彼は、三年前に失踪したウネンの師匠を罪びとだと言って探していた。
師の犯した罪とは何なのか。彼が持ち出した門外不出の知識とはどのようなものなのか。
恩師の無実を証明すべくウネンの旅が始まる。
――小柄で男の子と間違えら
おすすめレビュー
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- ★★★ Excellent!!!謎多き世界の秘密に触れていく面白さ! 未来を求めて足掻く者たちの物語。
この物語は、小柄で男の子に間違われることの多い少女ウネンを中心に、とある理由で彼女と共に旅をすることになる剣士と魔術師との冒険譚です。
初手から散りばめられた謎が多い中、主人公であるウネンが一瞬見せる表情で、彼女が可愛らしい性格の少女だと教えてくれます。
彼女が出会う剣士と魔術師も、どこか胡散臭さを残しつつも可愛いなと思わせられる描写が多々あり、読み進めるごとに彼らに対する興味をぐっと高めていってくれることでしょう。
中心人物だけでなく、旅をする中で出会う様々な人々の解像度も高く、物語全体を通して人物描写が丁寧なのです。
それだけでなく、情景描写も非常に丁寧に描かれています。
酒場の様子…続きを読む - ★★★ Excellent!!!その叡智は誰がために。各地を巡り世界を紐解く、珠玉の冒険ファンタジー!
少年に間違われがちなぼくっ子少女と、護衛という名目でついてきた二人組の青年が、失踪した医者を捜して各地を旅する冒険譚。
行方の知れない医者へレー氏は、主人公である少女ウネンと縁の深い人物ではあるものの、実は青年二人とも深い関わりを持つ存在だったりします。彼の足取りを負って一期一会を繰り返していくうちに、真相と世界の秘密が明らかになってゆく……という謎解きの側面を持つ旅物語です。
ウネンはぼうっとしているところがありつつも、臆さず話し物事を深く考えて読み解く聡明さを持った少女なのですが、重い過去を背負っています。幼少期の経験と、医者へレーとの出会い。それが彼女を旅に駆り立てているといっ…続きを読む - ★★★ Excellent!!!出会えて良かった!と心から思える作品
とにかく心の底から物語に浸れる作品です(こちらをレビュータイトルにするか迷いましたが)。
特に人物描写が秀逸で、登場人物の感情が手に取るようにわかるためか…全ての話で物語に没入してしまいます。
それが原因でもあるのか、気づかぬうちに、共に旅する三人の登場人物に本当に愛着が湧いてきて…
完結まで読み終えた今、この先もずっと三人の旅を見守りたい気持ちでいっぱいで、少し寂しくなってしまいました。
登場人物への愛着もある中、世界の大きな謎を解き明かす展開から、
速読の方は面白くて読む手が止まらず、遅読の方はじっくり噛みしめながら読めるような作品かなと思います。
いずれにせよ、これだけの文字数の超大…続きを読む - ★★★ Excellent!!!世界の謎が目の前で紐解かれる快感。この文字数を一気読みしたのは初めて。
地図を作る知識がある少年に見える少女ウネンを主人公とし、大柄な剣士オーリと皮肉屋の魔術師モウルのコンビが織りなす、ほのぼの旅行記を想像して読み始めした。
怪しいけど何処か憎めない凸凹コンビと共に、地図作りの知識を授けてくれた師を探す旅に出るという小さな物語からのスタートで、最初は本当にイメージ通りだったのですが……。
事件に巻き込まれながら進む物語にあって、今までのエピソードで知りえた事が突如、線を結ぶ瞬間があり、「あ、あれってこれの事だったんだ!」と、世界の解像度が一気に上がるのです。そして自分が今、壮大な世界の中にいると知る。
と同時に、彼らの過去が適度に絡められ、欠点も長所も…続きを読む - ★★★ Excellent!!!鮮やかに目の前に広がる魔法に満ちた世界の謎とワクワクの冒険譚!
少年と見紛う筆者師見習いのウネンは、地図制作の依頼の途中で腕利きの旅の剣士と何やら曲者の魔術師と出会う。彼らはウネンの師を、その罪のために探しているのだという——。
この世界では魔術師は皆、光を通さない漆黒の髪をもつと言います。神の「かたえ」と呼ばれる魔術師、ノーツオルスという謎の存在、そして、ウネンの師匠であったヘレーの秘密。それはやがて世界を揺るがす大きな謎へと繋がっていきます。
そして、とにかく登場人物たちが魅力的! 寡黙で、でも優しい剣士のオーリ、笑顔が胡散臭いと言われてしまう曲者のモウル、通りすがりの盗賊たちは悪役なのに、なんだか思わずクスッと笑ってしまうような愛嬌も。
…続きを読む - ★★★ Excellent!!!小さな謎をひとつひとつ。その全てが世界というパズルのピースになっている
世界の秘密を巡る冒険譚、とあらすじには記されています。
けれど読んでいる時の感覚としては、決して謎はそんなに(読者の手に負えないほど)壮大なものではないのです。目の前に現れた謎にひとつひとつ触れ、探り、解決し……と堅実に、けれど時折織り交ぜられる事件に息を呑みながら読み進めてゆくと──ある時唐突に、「世界」が姿を表します。
知らず知らず、自分は主人公ウネン達と共にとてつもない秘密を探らされていたのだと、突然気づかされるのです。
散りばめられたピースが魔法のように美しく組み上がってゆくのを、口をぽかんと開けて呆然と見ているような心地がしました。
と、このレビューだけを読んだ皆様はきっと…続きを読む - ★★★ Excellent!!!壮大な冒険と、謎と、それでもどこか優しいファンタジー小説
あの日の私が、ここにいる――
読みながら抱きしめたくなるような優しい物語は、名前も覚えていない、当時の私が愛してやまなかった児童文学の表紙を撫でるような心地をくれました。
懸命で可愛らしいウネン。少年のように見られがちな彼女は素直で、優しく、賢い人です。
そんな彼女が出会ったオーリとモウルは、口数が少なく不器用な人と斜に構えたような態度を見せる人。その二人とも優しく、誠実で、けれども謎がある。
ウネンと彼らの関係は、謎や追うものから最初はあまり好ましいスタートと言えないでしょう。けれども三人とも優しい人で、懸命で。ウネンの真っ直ぐさと賢さが物語と彼らの関係を進めていきます。
一つの謎が解…続きを読む