鮮やかに目の前に広がる魔法に満ちた世界の謎とワクワクの冒険譚!

 少年と見紛う筆者師見習いのウネンは、地図制作の依頼の途中で腕利きの旅の剣士と何やら曲者の魔術師と出会う。彼らはウネンの師を、その罪のために探しているのだという——。

 この世界では魔術師は皆、光を通さない漆黒の髪をもつと言います。神の「かたえ」と呼ばれる魔術師、ノーツオルスという謎の存在、そして、ウネンの師匠であったヘレーの秘密。それはやがて世界を揺るがす大きな謎へと繋がっていきます。

 そして、とにかく登場人物たちが魅力的! 寡黙で、でも優しい剣士のオーリ、笑顔が胡散臭いと言われてしまう曲者のモウル、通りすがりの盗賊たちは悪役なのに、なんだか思わずクスッと笑ってしまうような愛嬌も。
 何より、わりとあれこれ率直な物言いをしてしまうウネンですが、彼女が背負う過去が明らかになったとき、辛いけれど、彼女を見守る人々の温かさに思わず涙がこぼれました。

 魅力的な登場人物たちと、風の吹き抜ける音や大地の匂い、そして見たこともない魔法がいきいきと感じられるこの世界で、ただの剣と魔法のファンタジーでは終わらないその謎を、ぜひ彼らと共に最後まで見届けて欲しい、素晴らしい一作でした。

 個人的には脳筋魔術師(!)のマルセルとトゥレク老師が大好きなので、また彼らの登場する番外編なんかも読んでみたいですー!

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