その叡智は誰がために。各地を巡り世界を紐解く、珠玉の冒険ファンタジー!

 少年に間違われがちなぼくっ子少女と、護衛という名目でついてきた二人組の青年が、失踪した医者を捜して各地を旅する冒険譚。
 行方の知れない医者へレー氏は、主人公である少女ウネンと縁の深い人物ではあるものの、実は青年二人とも深い関わりを持つ存在だったりします。彼の足取りを負って一期一会を繰り返していくうちに、真相と世界の秘密が明らかになってゆく……という謎解きの側面を持つ旅物語です。

 ウネンはぼうっとしているところがありつつも、臆さず話し物事を深く考えて読み解く聡明さを持った少女なのですが、重い過去を背負っています。幼少期の経験と、医者へレーとの出会い。それが彼女を旅に駆り立てているといってもいいかも。そこに、無口ながら親切な剣士オーリと軽妙で頭の良く回る魔術師モウルの、秘密と思惑が絡み合って謎を複雑にしています。
 全部の真実が明るみになるのは終盤ですが、そこで一気につながってゆく感覚は非常に面白く、また懐かしいものでした。

 世界の作り込みと、世界観を表すため考え抜かれた用語、雰囲気を保つ筆致も素晴らしい、読み応えのあるファンタジーです。
 大長編ですが完結しておりますので、ぜひゆっくりした時間にご一読ください。

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