金と出世が欲しい検非違使x仕事中毒の陰陽師。平安バディミステリ!

 時は平安——と聞くと、十二単衣に歌合、貴族の公達や姫君の歌のやりとりなど、宮中の雅な生活を思い浮かべる方も多いと思うのですが、こちらの物語はなんと呪詛を行った法師陰陽師の斬首というなかなかにショッキングなシーンから始まります。

 主人公の検非違使、尽時は、立ち回りが上手く出世欲が一際強い上司のおかげで日々あちこち駆けずり回される日々。ところがひょんなことから、蔵人頭とその娘の呪詛と見られる事件に関わることになり——。

 この主人公の尽時という人物が、カネカネ〜と俗物感満点なのですが、どこか憎めない。困っている人がいればなんだかんだと手を差し伸べるし、いざとなればの度胸もある。そして彼と共に事件の調査にあたることになる真遠という陰陽師も何やら訳ありで。

 平安を舞台に、華やかな宮中とは対照的に貧しく苦しい市井の様子や、実費の持ち出しの多い検非違使の日常風景など、呪詛や呪術が当たり前にありながらリアルな日常が語られていきます。というととっつきにく印象もあるかと思いますが、何しろこの尽時の性格があっけらかんとしていて、文章もカタカナ語もさらっと使われているのに違和感がない絶妙な語り口のおかげで、かたくならずにごく楽しく読めてしまいます。

 1エピソードあたりの文字数が〜8000字とちょっとボリューム多めですが、それも気にならないほどしっかりと描きこまれた平安の習俗や呪術の設定、何より尽時の人情味あふれるめんどくさがりかつめっちゃポジティブな言動が大変楽しい平安バディミステリ。毎日の読書などにおすすめです。

 書籍で読みたいし、なんなら実写ドラマで見てみたい一作。おすすめです〜!