森のはずれで燃えるような赤毛の青年ジョセフと出会ったルネ。彼は「蜂の獣人」で、ジョセフは「鳥の獣人」だと言います。
そして養蜂家のシモンの家で暮らすルネには何やら色々事情があるようで——。
人と蜂の言葉を理解し話せるルネと、ことあるごとに彼に噛みついてくる人語を解するリーダー蜂のニンナ。「気ガレ熱」にかかってしまった二人が体験する冬と、やってくる春。
卵から生まれる生き物はすべて「卵屋」が作り出すという、とても不思議な世界ですが、説明的な描写は最小限です。けれど、ごく自然に当たり前のようにそこに在り、生きる彼らの悩みや命の巡りが丁寧に語られる様が深く心に染み入り、思わず涙がこぼれてしまいました。
穏やかで静かなのに、不思議と心が震えてしまう、少し切なく温かな物語。この冬にとってもおすすめです。