様々な恋模様が絡んだ上質なファンタジー

精霊と人間の大戦の爪痕が残る世界。孤児として育ったディルは、ある日二人の青年と出会う。彼らと運命を共にすることでディルは禁忌を破ってしまい、それにより呪いを背負うことに。
ふりかかった呪いを解くため、ディルの、自分を見つける為の旅路が始まる──

特筆すべきは、美しい世界観の描写です。精霊や竜など人ならざる種族が生きている神秘的な世界が、流麗かつ繊細な言葉で紡がれており、複雑な設定はあるもののそれを感じさせることなくスッと物語に入ることができます。
そこにあるのは、『指輪物語』や『はてしない物語』のようなかつて誰もが憧れたファンタジー世界。洋画を思わせるような含みを持たせた会話も、この世界観を際立たせています。

内容は大人向け。恋愛の描写が濃く、主人公ディルに惹かれるアルヴィードとロイの恋の駆け引きもメインのひとつです。生きることに執着しないディルは、自分に優しくしてくれる人にならすべてを委ねてしまうような危うさを持っており、時折り微妙に手を出しながらも、ぐっとその熱を抑える魅力的な男達に、読者も時には甘く、時にはじれったさを感じながら読んでしまいます。

主人公を取り巻く運命が、読み進めていくうちに徐々に紐解かれていくのも面白く、また長寿の種族が多い為に、恋模様も複雑に絡んでおり、実はこの人とこの人が過去に…というように読めば読むほど意外な発見も。

生きる希望を失っていたディルが、二人の男との旅を通してどのように変わっていくのか、ぜひ見届けてほしいです。

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