第40話 宵闇小隊(2)

「選ぶって……」


 図南は茫然とした様子でそう口にすると、訓練中の騎士と騎士見習いたちを見た。

 そして、騎士団長に聞く。


「あのなかから選ぶんですか?」


「現在、どこの隊にも所属していない者たちだ」


 騎士見習いがどこにも所属していないのは分かるが、正規の騎士に十人がどこの隊にも所属していないことに首を傾げる。


「正規の騎士もいるようですが?」


「彼らは予備戦力だ」


 騎士団長の言葉をギードが補足する。


「急な用事や病気で休暇を取ることもあります。仕事が仕事なんで大怪我をすることもあるし、場合によっちゃ手脚を失うこともあるでしょ? すぐに補充できないと困るんで、一定数の騎士を予備戦力として常に確保しておくんですよ」


 急用での休暇は理解できたが、上級神官が側にいるのだから病気や怪我で休むことはないだろう、と別の疑問が湧き上がった。


「病気や怪我なら神官に治療してもらえば済むんじゃないのか?」


 図南の疑問に騎士団長とギードが揃って驚く。


「軽い病気やちょっとした怪我程度なら助祭にお願いして治しれもらうこともありますが、司教でないと治せないような重い病気や怪我は診療所に入院して治すんですよ」


「この神殿に司教以上の方が何人いらっしゃると思っているんだ?」


 その騎士団長の言葉で、重病の患者や大怪我を負った者を治せる神聖魔術の術者の数が足りないのだ、と図南も理解した。


(仮に術者が増えたとしても、俺や紗良のように無尽蔵の魔力があるわけじゃないから一人で治療できる人数にも限界があるか)


「理解しました」


 図南の言葉に騎士団長は軽くうなずいて言う。


「訓練の様子を見るなり、実際に手合わせをするなりして力量は判断しろ」


「騎士や見習い騎士の経歴が書かれた書類を見せて頂けますか?」


 特技などが書かれた履歴書のようなものを思い浮かべる。


「ギード、お前のところの小隊長は身上書が欲しいそうだ」


「最初から全員の書類を見るんですか?」


 騎士団長が呆れたように言い、ギードも困ったように頭を掻いた。

 図南がギードに聞く。


「普通はどうやって選ぶんだ?」


「先ずは魔法が使えるかの確認と剣の腕ですかね。身上書は面談のときの参考に使うくらいですな」


(俺の感覚だと先ずは書類審査なんだが……、郷に入っては郷に従え、か)


「分かった、それじゃ先ずは練習を見学しよう。見学しながら気になったことを聞くからギードは俺の側で質問にこたえてくれ。


「了解です、小隊長殿」


 図南は敬礼をするギードから騎士団長へ視線を移す。


「騎士団長はどうされるのですか?」


「ここで待つ」


 短い答えが返ってきた。


 図南とギードは騎士団長に敬礼し、訓練をしている騎士たちの方へと歩を進める。

 歩きながら図南がギードに聞いた。


「騎士と見習い騎士、それぞれ何人ずつ選ぶんだ?」


「小隊は隊長を入れて五人ですから、あのなかから三人を選んでください。騎士から三人を選んでもいいですし、見習い騎士から三人を選んでも構いません」


 人選は隊長である図南の裁量だと告げた。


「副官のギードの意見も聞きたいんだが、構わないな」


「自分は副隊長です。副官ではありません」


「すまない、副隊長と副官の違いを教えてくれ」


 ギードが信じられないといった顔で図南を見つめ返した。

 だが、すぐに気を取り直したのか、今度はヤレヤレと言った様子で説明を始める。


「副隊長は隊長が不在などで指揮が執れないときに指揮を代行するなど、隊長の代理を務めることも仕事となります。副官は隊長の身の回りの世話や書類仕事の手伝いをする者を指します」


「ありがとう」


「それで、どうします?」


 訓練を見るのか手合わせをするのかをギードが聞いた。


「先ずは訓練の様子を見させてもらうよ」


 図南は訓練している騎士たちに対して、解析のスキルを使って一人一人の所有するスキルとステータスを見ることにした。





□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□

        あとがき

□□□□□□□□□□□□□□□ 青山 有


より多くの方に フォロー & ★★★ で応援頂けますと作者のモチベーションアップにつながりす。

どうぞよろしくお願いいたします。


――――――――――――――――――――


『【改訂版】国境線の魔術師 休暇願を出したら、激務の職場へ飛ばされた』

を一部改訂して投稿しております。

こちらもお読み頂けますと幸いです。


【改訂版】国境線の魔術師 休暇願を出したら、激務の職場へ飛ばされた

https://kakuyomu.jp/works/1177354054894983245

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る