SFとしても、人間ドラマとしても、あるいはファンタジーとしても、すごく綺麗に完成された物語でした。
特長を書くとすれば、まず世界観が魅力的です。
音をしばらく聴き続けると死んでしまう、人間たちの謎。
現代日本に似た街の中にそびえる、中世の城のような不思議な施設。
それを制御しているのは、丘の上の広場のピアノ。
そんな謎とロマンに溢れたSF都市が、このお話の舞台です。
さて物語は、そんな都市である少年が出会った、ピアノ弾きの少女を軸に進んでゆきます。
かれら二人の美しく、またどこか退廃的な感じもする或る計画は、しかし、意外な結末を迎えます。
長々と描いてしまいましたがともかく、
世界観、物語の構成と意外性、文章の巧みさ、そして登場人物たちの清々しさと、どれをとっても素晴らしい物語でした。
SF好きな方にも、苦手な方にも…… というよりは、物語が好きな方みんなにおすすめしたい作品です。
ぜひぜひ、ご一読ください!
個人的に静かな部屋で読むことをお勧めします。
作中の人々のように耳栓をするのもいいかもしれません。
とにかく、静かな状態で読んで欲しいのです。
そんな状態で話を読み進めると、音が聴こえてくるはずです。
楽しげな音やどこか物悲しい音、懐かしいような音や恋しい音、音、音。
ふと、顔を画面からあげると音はしません。
しかし、この話を読んでいる間確かに音を聴くのです。
音は連なり音楽になります。
最初聞いたときは何気ないと思っていた音に思わぬ響きが隠されている驚き、悲しいとさえ感じた音の転調、そして最後、残響の美しさ。
この話は間違いなく一つの見事な音楽であり、それを奏する美しい楽器です。
なんて、少しキザな喩えだったでしょうか?
でも、本当にとても素晴らしい作品でした。
お勧めです。