連鎖

「……聴こえるって、、それは、


唯一の例外があるとするなら、それは、

ミルカでない僕が、ぞくりとする興奮を覚える。

いや、そんな場合ではない。

だのに、


は、上位世界の、と呼ばれる個体と、自分の世界で会ったのか! ですら、そんな事例を直接聞くのは初めてだ!」


ギュードゥルン女史がぎょっとした目でこちらを見ている。

興奮を抑えきれない。

気がつけば、自分の口角が上がっている。

今生と前世の乖離かいり。今生では抑えきれない前世の感情の噴出。

ぼくは自分の手首を強く強く、爪を立てて握りしめて、頭を振る。


「ミルカさん」

「失礼、大丈夫……大丈夫です」


今、ぼくまで今生を見失うわけにはいかない。

――そうだろうか。

それは情報を得たいの思うところでもないだろう。

――いいや、すでにそうでもない。

嗚呼、本当にこれだから、ぼくという人間は面白い面倒くさい

はまだその不揃ふぞろいの髪をぐしゃぐしゃとむしっている。


「……ソルヴェイ嬢、まだ話せますか?」

「ミルカさん、無理はしないと……」


無言でギュードゥルン女史を一瞥いちべつすると、彼女は口をつぐむ。

嗚呼、そう、それでいい違う、そうじゃない

僕は、もっと知りたいソルヴェイ嬢に無理をさせるのは

――もっとも


「…………帰って、おいでと……そう、いつも、いつも」


誰の言葉も、己の顔にまで爪を立てる今のには届いていない。

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