切欠

「沼の縁に本性のの頭を乗せて、朝方までわたしを抱いていたまぎれもないの身体を沼にひたして、は、は、わたしを見て、目を細めて、そしてまたの姿で、わたしに、わたしに!」

「ソルヴェイ嬢!」


ソルヴェイ嬢の肩を掴むと、弾かれたようにソルヴェイ嬢はからくり人形のような無機質さでこちらに虚ろな目を向ける。

蒼白の美貌に気圧けおされて、思わず手を緩めると、その手を振り払われた。


「下女は、家に走っていって、でもあのわたしのがしてなどはくれなかった! と同じ顔に、笑顔を浮かべて、わたしを連れ去って、だから、わたしわたし!」

「ソルヴェイお嬢様!」


ギュードゥルン女史が、ぼくと同じくソルヴェイ嬢の肩を掴むが振り払われる。

ソルヴェイ嬢はうつむいて頭を抱えると、ぐしゃぐしゃと頭をむしる。


「嗚呼、嗚呼、あああ、あれは、わたしを優しく冷たいその身で、締め上げて、笑って、と、同じ、顔で……あ、ああ、わたしわたし、まだ、逃げられない……だって、まだ、まだ……」


――聴こえるの。

その声は呼気にまぎれて、それでも確かにぼくの耳朶じだを打つ。


「……聴こえる?」


――そんな馬鹿な。

が研究していた限り、死んで別の世界に生まれ変わる以外に、どんなものも世界を越えることはできない。

はふらりと立ち上がり、ソルヴェイを見下ろす。

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