到着

そうこうしている内に荷馬車は貴族のものにしては、とてもこじんまりとした屋敷に着いた。

すぐに屋敷の中から二人の女性が出て来る。

片方の女性はエプロンを伴った仕着せを身に着けているため、メイドだろうとすぐにわかった。彼女は荷馬車の農婦の方にまっすぐ向かって行き、農婦も慣れたように彼女の誘導に従って荷馬車を移動させた。

もう一方の女性がぼくに向かってくる。

遊びのない紺の必要以上に華美ではないが上等なその服と、華やかさよりもきっちりという印象を受ける化粧、そして三十路みそじ前後ぐらいだろう。

――美人ではあるがちょっと棘が強いか。

おそらくはソルヴェイ嬢の女家庭教師ガヴァネスか。


「どうも、お初にお目にかかります。ぼくはリンドフォーシュ伯爵より依頼を受けまして」

「ええ、のミルカ・ハクリ様ですね。主たるランヴァルド様より、お話は伺っております。私はソルヴェイお嬢様の世話を仰せつかっておりますギュードゥルン・ビョルケグレーンと申します」


ギュードゥルン女史はそのきりりとした目尻を比較的緩めて、その真面目そうな印象そのままのやや神経質な堅めの声でそう言って、ぼくについてくるよう促した。

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