検証が甘い

「犯人はこのなかにいる」

「なんだって?」


一堂にどよめく人々。


私はとある人物を指さす。


「金田町の連続殺人の犯人。それはあなただよ、峰田さん」


峰田さんが驚いたような顔をする。


「冗談はやめてくれよ」

「冗談じゃないですよ、あなたが犯人だ」

「だって俺は佐藤が殺されたときのアリバイがあるだろう?佐藤はホテルで殺された。でもその時、俺はそこから5kmも遠く離れた自分の家にいたんだ。家族も俺のことを見ている」

「それは遠隔トリックによって達成できる」

「なに?」


周囲の人々は峰田から少しずつ離れていく。


「峰田さん、あなたは自室にあるコンピュータを使って、佐藤さんを殺したんだ。佐藤さんが泊まるホテルの部屋に事前に侵入し、拳銃を設置。そこに小さな機器をセットしておく。もちろん、遠隔で拳銃を引き抜くための機会だ。しかもドローン付き。センサーもついている。佐藤さんが玄関から対角にある窓辺にきたらドンと拳銃が撃ち抜かれるようにね」

「そんなのデタラメだ..」

「デタラメじゃないですよ。検証してみればわかる」


杉山刑事に手伝ってもらい玩具の銃で同じ状況を作り出す。被害者役をみずきにやってもらう。電話をかけ、みずきが窓辺に来る。機器が反応し、玩具の銃が発射される。ドローンが動き出し、機器と銃を窓から運び出す。


「そんな...」

「あとはドローンを人気のない山へ着陸させ、処分するだけ。同じホテルに泊まっていた人が銃声の後に見た宇宙船のようなものは飛んでいくドローンだったんだ」

「違う。それはたまたま誰かがドローンを見ただけだ。考えてみろ、だってそもそも、そんな大掛かりな装置を扉に設置したら、佐藤が部屋に入ったときにすぐ気がつくだろう!」

「言われてみればそうだ!」

「な、そうだろ?」

「うん」


峰田のもとに周囲の人々が戻ってきた。

かわりに私から離れていった。


完.

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