特に教訓が得られない

カメは歩みが遅かった。


友人のウサギはカメの鈍い歩みを見て、「世界のうちでおまえほど、歩みののろい者はないな」と言った。カメはそれを聞いてムキになり、「それなら駆け比べをしようじゃないか」とウサギに言った。


ウサギは自分の健脚には自信があるものだから二つ返事で競争を承諾した。


「それなら山のふもとまで、どちらが先に着くか勝負しよう」


意気揚々とウサギが言う。「いいだろう」とカメが言う。


一斉に走り出す二者。

あれよあれよと間は開く。


カメがよいしょよいしょと歩みを三つ進めるまでに、ウサギはぴょんぴょんと跳ねてカメから見えないところまで進む。


ウサギは一足飛びに道を走り抜ける。


ウサギが半刻ほどで道の半分を超えたその頃、カメは走り出しからやっと二十五歩、進んだところだった。


ウサギは少し休憩をすると再び、自慢の健脚で走り出す。もう半刻が経ち、ウサギが山のふもとに辿りついて、息を整えている頃、カメは走り出しから五十歩、進んだところにいた。


脚の速いウサギが勝って、脚の遅いカメは負けた。

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