きっと今幸せな状況なのだろう、普通なら。

 オッス!オラすぐる


日向先輩と今飯食ってんだけんど、まさかヨイハナのメンバーが来るなんてオラおでれえたぞ!!!

日向せんぺぇも気付いちまったし、なんでかわかんねぇんだけんど、宵川のやつがオラのこと睨んでくるんだ!

でぇじょうぶなんかなぁ? オラこの先しんぺぇだぞ!!!


次回!

逃げろ傑! 20べぇ界王拳で駆け抜けろ!


みんなぜってぇ見てくれよな!!!




「ねーねー二人はcoupleなノ〜?」


「ちょっ!!と、尊すぎる……!!!」


「……」←傑(定期)


界王拳出しても逃げられる気がしねえ……。

オラビックリだぞ!…………はぁ。


まさかの邂逅とはこのことだな。しかし、思いの|外(ほか)日向先輩は、推しメンのマリンちゃんを目の前にしようと握手を求めたり飛びつこうとしたりしない。

いやどんな印象抱いてんだって感じだけど……ライブ中の様子見ちゃったらねえ……?


「こらマリン!いい加減にして!」


「あーんもう、リーダーは厳しいネ」


bye!と発音よく、日向先輩から離れていくマリンちゃん。

宵川から俺に声をかけてくることはなく、素通りして隣のテーブルの奥へと座った。ちゃっかり上座(ここ重要)。

一方日向先輩はというと、いまだにアワアワと身悶えしていて、さっきまでの事故のドキドキ感は解消された模様。

周りのお客さんはヨイハナと俺たち交互に見てるけどね!周りの気持ちは解消されてないみたいだね!誰かリセッシュ持ってきて!一番強いやつ!


なんていつも通り心の中で気持ちを取り繕っている俺氏。


「……」


「……」


席についても尚、俺のことを睨んでくる宵川氏。

先ほどまでのライブにいたファンであれば、『レスktkr!!!!』と沸き立ち、たちまち周囲のファンから嫉妬にまみれたレスも獲得するだろうが、現在宵川から俺へと注がれるレスは、完全に殺意の眼差しだ。ヤダ怖い!ワタシ何かしたかしら!?おそろしい子!!!


「お、尾崎くん……」


「はい……?」


一方で日向先輩はビクビクと体が痙攣したような状態だ。

よっぽどマリンちゃんと至近距離で話せたことが嬉しいのだろう。


「私、今日死ぬのかな……」


「いやどんだけだよ!!!」


運を全て使い切ってしまったと言わんばかりに、表情が満ち足りている。

アイドルと関わるくらいのことで運を全て使い切ってしまうのであれば、きっとさっきのボディガードっぽいスタッフのおっさんはとっくにファンに刺殺されて、名誉の死を遂げているだろう。


「はあ……それよりも先輩、そろそろお店出ません?」


「え、勿体なくない? こんな状況、多分この先一生無いと思う!」


「それは同意ですけど……このままここに居たら先輩興奮しすぎて倒れそうですし……」


「それも……そうだね……」


食事もできて、お酒も飲んで祝杯も挙げられたことだし、そろそろお暇するにはもってこいだろう。

まあいろんなことが起こりすぎて酒なんて完全に抜けたけどね!!


「うう……やっぱりもったいない気が……」


「先輩!ファンならアイドルに迷惑かけないのが真のファンですよ!!」←謎にキレ気味


「新規の素人に怒られたぁ……ぴえん」


先輩には申し訳ないが、俺がこの空気感に耐えられないので店を後にした。

だってあのままじゃ俺息できそうになかったもん!!!



***


「さっきの二人やっぱりcoupleかナ〜?とっても楽しそうだったネ〜」


「二人でご飯食べてるだけでカップルなんて、中学生じゃあるまいし……」


「でもでも!見た感じあの二人大学生じゃん??ってことは、この後やっぱりホテr……」


          バァァァァン!!!!!


「「「……」」」


「……あ、ごめんごめん!ビール、美味しくってさ」


「「「……」」」


「みやびちゃんがビール飲むなんて珍しい……」

「てか置くときの音半端じゃなかったよ……ジョッキ割れてない?」

「みやびちゃん男らしくてカッコいいネ〜!」


その日、みやびは飲み過ぎで後日二日酔いになったらしい。
















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