作者の作品は、こういう状況になったら自分ならどうするんだろうな、ということがきちんと書かれています。きっと主人公と同じことをするかも、いやあの人と同じことを…と考えさせられます。そしてその上で、意外な視点が書かれて「こういう考え方もあるんだ」と驚きます。この作品もそうです。お読みいただけましたら幸いです。
面白かったので苦痛なく一気に最後まで読むことができました。話の浮き沈みが上手く、最後の落ちも思わず笑ってしまいました。
思考実験的なアイディアをコンパクトにまとめた短編。一見ぶっとんでいるようでいて、現実を皮肉る設定が秀逸。軽妙な語り口や自然なネットミームもこの作者らしい。
自称正義の人によって、ネットでは私刑がはびこっている。 大抵は根拠がなかったりするのだが、我々は右往左往してしまうのである。 そろそろ何らかの手立てがあっても良さそうなのだが、相も変わらずSNSに興じるあなた、気をつけなさい。
キャッチーなタイトルに見事にはまってしまった1人です。名前とは何か? イメージとは何か?ありそうでまだ起きない近未来に、果たして我々はどんな名前を称え、けなすのか?軽いテンポで読めます。あなたの名前は入ってますか?
上の一文に代表されるような、小気味良く、センスとテンポの良い言い回しが適度に散りばめられており、読後感まで気持ちの良い短編でした。ユニークな作品ではありますが、差別、偏見とは端から見ればこれくらいシュールで笑い飛ばすのが当然なようなもの、という点ではリアルですね…。
シュールでコミカルな世界観のお話です。というのに「一歩間違ったらこういう世界もあるんじゃ無いか」と考えさせられるお話でもありました。その妙なリアルさがあるのは、作中でインターネット文化の問題点や面白みが非常に巧みに描写されているからでしょう。ネットで謂れのない批判や差別が起こるのは、よくあることです。しかし、それに目を付けて作品にするのは並大抵のことではありません。メッセージ性と楽しさが両立した良い作品だと思います。
文体は静かだが偏見、賞賛、嫉妬、諦観、様々な感情や世間の反応がするりと入ってくる。展開も皮肉が効いていてかつ読みやすく、これは間違いなく秀逸作。短編でこの濃さを出せるとは恐ろしい…。
世相を皮肉るこのセンスよ。創作なんて自由なんだから、好き勝手やればいいのに、あれやこれやと世間は煩い。煩いだけならまだいいが、作品の根幹にまで絡んできたら手に負えない。その発想の飛躍・展開は面白いと素直に思える作品でした。
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