第4話 音楽部、始動

 ――そして記念すべき部活初日。私達は三階の端にある空き部屋を使わせてもらえることになった。セトが部長、私が副部長という音楽部だ。顧問の紫波先生は部の設立祝いとか言って、電子ピアノを買って部屋に置いてくれた。部活のスタートとしては順調だ。ある程度部屋を整理した後、私は傍にあった椅子に腰掛けて聞いてみる。


「部活名、どうする?」


「ふたり音楽部!」


 彼は待ってましたと言わんばかりに目をキラキラと輝かせて即答した。それからニコッと笑ってずっと考えてたんだ、と言う。


「うん、これで部活名は正式決定!じゃあ、曲作ろう」


 なんて言って彼は勝手に話を進め、慣れた手つきで電子ピアノのスイッチを入れると鍵盤の上にそっと手を置き何かの曲を弾き始めた。軽快なメロディから始まるこの曲、あれ、もしかして――?聴いたことのあるメロディはその後も美しく広がりサビに入った部分で彼は歌い出す。


「世界を彩ろう、キミとボクで――」


 やっぱりあの曲だった。透き通った歌声が教室に響き渡り、ピアノの音と重なって綺麗な和音が空間を満たしていく。聴いているだけで何だか心地の良いものに包まれていく、そんな感じがした――。


「ねぇ、この曲気に入ってくれた?」


 彼は曲を弾き終えるとクルリとこちらを振り返って、少し照れながらそう言った。


「うん、勿論だよ。私この曲大好き」


「ありがとう。そう言って貰えて嬉しいよ。なんだけど、この曲まだサビの部分しか歌詞がなくってさ……」


 彼は髪を掻きながらくしゃっと笑った。


「じゃあ、ふたりで作ろう。この曲!」


 私は自然とそう言っていた。本心で思っていることをこんなに素直に言うのは久しぶりな気がする。この曲を作って誰かに届ければ、今私のやりたいことが分かるかもしれない、そんな気がしたからだ。そんなこんなで、私が作詞担当、奏汰が作曲担当となって進めることに決定した。この部活の活動目標テーマは「キミの世界を輝かせること」

 こうして私達のプロジェクトはスタートしたのだった。

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