Cherry blossoms

 あれから何度、桜の季節を過ごして来ただろうか。彼との高校生活は想像していた以上に楽しくて、中学の時とはまた違った素敵な三年間だった。

 桜の木の下で、私は一つだけ彼に質問をした。


「どうして、私に同じ高校を受験するって教えてくれなかったの?」


 彼は髪を掻きながら笑ってこう答えた。


「実はね、かえでと紫波先生が話しているのを廊下で聞いちゃったんだ。俺の歌を聴いて、音楽に対するかえでの想いを聞いたらさ……俺は他に迷ってる高校があって、音楽の道には進まないと考えていて。だけど、かえでのその言葉に背中を押されたんだ。かえでに同じ高校を受験することを伝えるべきか散々悩んだんだけど、どっちかが落ちちゃうとか余計なことを考えて受験に集中出来ないのはお互いに良くないと思って敢えて言わなかった。隠しててごめんね」


 彼は私にそんな優しい嘘をついていた。その事に気づいた今、涙が込み上げて来た。何度目だろうか。彼の前で零す涙は。——そして今は、彼がその温かい手で私を優しく抱きしめてくれている。


「かえでは、本当に泣き虫だなぁ」


 彼は笑いながらそう言って、私の左手の薬指に桜色の可愛らしい指輪をはめてくれてた。


「これからは、いつも俺がかえでを笑顔にしてあげるから」


「うん、これからも宜しくお願いします」


 私はとびきりの笑顔でこう答えた。満開の桜は私たちふたりを祝福してくれているようだった。

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ふたり音楽部 まろん @ayamaron

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