第17話 スタンの決意

 背中をもろに地面にぶつけ、ヘッドは息ができなくなった。

もだえて応答しないヘッドにスタンはれた。


 やっとヘッドが呼吸ができるようになった時・・


 「おい! ジャックは何処だ、答えられるだろう!」

 「あのさ、それって人に聞く態度?」

 「・・・。」

 「普通さ、人に聞くときはお願いするものでしょ?」

 「・・・。」

 「あ、そう、聞きたくないのね?」


 ヘッドの逆襲である。

スタンは、ギリッ!と奥歯を噛みしめた。

ヘッドを睨む。

ヘッドは、それを苦笑いで見つめる。


 ヘッドは、何時いつもはヘラヘラしているのに以外と度胸は据わっている。

たぶん・・で、あるが、鬼・・いや愛する妻のお陰であろう。


 「どうすんの? 聞きたいの? 聞きたくないの?」

 「ウグッ!・・」

 「あん? 聞きたくないんだ。」

 「てめぇ!」

 「あ、聞きたくないんだね~。」


 「わかった、教えろ。」

 「へ~、教えろね~。」

 「いや・・・、頼む、ジャックの居場所を・・。」

 「え? 何?」

 「グッ!」

 「居場所を? どうしてもらいたいのかな~、っと。」

 「お・・、教えて下さい・・・。」


 「う~ん・・、どうしようかな~っと。」

 「てめぇ!」

 「あのさ、ジャックがどういう状況か知ってんの?」

 「?」

 「どうして有名な二人組が別れたか知らないけどさ?」

 「・・・。」


 「相棒の状況も知らないで、何を怒ってんのさ?」

 「うるせぇ! お前には関係の無いことだ!」

 「まあ、そう言われちゃえばそうだけどさ・・。」

 「で、アイツの居場所は!」

 「落ち着けって。」


 「うるせぇ!! 居場所だ、居場所!!」

 「あんた、バカ?」

 「ば、バカだと!」

 「あのさ、その様子だと殴り込むつもりだろう?」

 「ああ、それがどうした!!」

 「ジャックさんの状況も知らないで?」

 「知ったこっちゃない!!」


 「この間抜け!!!!」


 温厚そうに見えたヘッドが、信じられない怒鳴り声を上げた。

スタンは一瞬、ギクッとした。

腰抜けだと思った相手からのかつだった。

それも、怒気どきはらんだかつだ。


 「いいか、良く聞け!」

 「う、ぬ!」


 ヘッドはスタンを目力めぢからで威圧しながら話す。


 「ジャックさんは重体だと聞いている。」

 「な!」

 「なんでも、もと恋人を助けようとしたらしい。」

 「元恋人? そんなの居るはずない!」

 「聞け!!」

 「・・・。」


 「元恋人のいた場所で銀河同士の衝突が起こったらしい。」

 「・・・。」

 「元恋人は早く逃げればいいのに逃げなかった。」

 「ふん、俺の知ったこっちゃない、そんな・」

 「聞けといっているだろ!」

 「・・・。」


 「元恋人の両親が、そこを動きたくないと言ったようだ。」

 「・・。」

 「おそらく、その銀河系を愛していて、そこで終わりたいと思ったのだろう。」

 「・・・。」

 「ジャックは、人伝ひとづてにそれを聞いたらしい。

 元恋人は何とか両親を説得しようとし、その銀河に居座った。

 ジャックは無茶苦茶に自分のエネルギーを使い、恋人の元に向かった。

 元恋人のところに辿り着いたとき、既に銀河の衝突が始まっていた。

 ジャックは元恋人と話し、両親の説得は無理だと判断したようだ。

 元恋人の願いを優先し、有無を言わさず両親を気絶させ脱出を始めた。

 その時、銀河同士の衝突により間近な恒星が砕けたらしい。

 元恋人に衝撃波しょうげきはが襲った。

 ジャックは元恋人をかばい重傷を負ったとか。

 それでも、なんとか元恋人と両親を助け出したようだ。

 しかし、助け出した後、倒れてしまったと聞いている。

 それから目覚める様子がないらしい。

 元恋人は、つきっきりでジャックの看病をしているらしい。」


 ジャックはヘッドの話しを最初は何度も遮ろうとしていた。

しかし、ヘッドの話しを聞いていくうちに怒気がせ、やがて目を見開く。


 ジャックは冷静になったようだ。

そして、暫く考え込んで・・。


 「あのバカ・・、もしかして俺を巻き込まないために・・。」


 そう言うとスタンは押し黙った。

腕を組み目を閉じ、そのままジッとしていた。

やがて、閉じた目からしずくほほを伝う。

口はへの字に曲げ、奥歯に力がはいっていた。

嗚咽おえつこらえてているようだ。

ヘッドは、その様子をジッと見守っていた。

1時間程経った頃・・。


 「スタンさん、やはり事情を知らずに、恨んでいたんだ。」

 「ああ・・・、そうだ。」

 「で、どうする? 場所は教えるよ?」

 「いや・・、会わせる顔がない。」

 「そう・・?」

 「ああ。」


 「もし、会いたくなったら言ってくれ。」

 「分かった。」


 「それから、落ち着いたら話したいことがある。」

 「ブロードキャストで話した太陽コロナの件だろう?」

 「あっと・・、まあ、そうなんだけど・・さ。」

 「気を遣う必要はないぞ、俺に。」

 「・・そう? でさ、この件は無理にとは言わない。」

 「・・・。」


 「落ち着いてからでいいから、考えてくれないか?」

 「いや、手伝うよ、そうさせてくれ。」

 「即答でなくていいんだけど?」

 「ふん、気を遣わなくていい、手伝うよ。」

 「無理していないか?」

 「そうだな・・、でも、手伝うさ。」


 「そうか・・、まあ、何かして考えない時間も必要かもな。」

 「ふん! お前は嫌な奴だ。」

 「ありがとう、褒めてくれて。」

 「ああ、お前には感謝している。」

 「・・・。」

 「有り難う。」

 「あ・・・、うん。」


 こうして「太陽コロナ対策勇者隊」が結成された。

え? 太陽コロナ対策勇者隊 って、どこから出てきたかって?

君、あまり些細なことは気してはいけない。

だいたい、このストーリー自体が、あちこち突っ込みどころ満載なのだ。

作者自身も頭をかかえている始末だ。

笑って見過みすごすのも、大人、および子供というものだ。

太っ腹でいようではないか! うん、そうして・・ね。

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