第15話 ヘッド:太陽の地場対策、それは、その・・

 ヘッドがブロード・キャストをした日から一週間が経った。


 その日、ヘッドは恒例の朝の散歩をしていた。

散歩前に朝のゴミ出しをしてからである。

その様子からは家庭的に思える・・・。


 しかし家庭的・・といえるのかは疑問である。

何故ならばヘッドは妻のシャンが怖いだけなのだ。

ゴミ出ししないと、シャンが怒るからである。

その鬼・・ゴホン!・・しっかり者のシャンは、まだ寝ている。


 ヘッドが散歩していると、リンが前から浮遊してきた。

そう散歩というより浮遊である。

漂ってきたというべきだろうか。


 「あっ! シャンさんの旦那だ!」

 「やあ、おはようリン。」

 「おはようっす、シャンさんの旦那さん。」

 「あのさ、俺の名前忘れてるだろう?・・」

 「えっ?・・、いや、そんなことないよ・・たぶん。」


 そういうとリンは、そろりと視線を外す。

そして外した視線を戻しながら、ヘッドに聞いてきた。


 「ところでもう一人のエネルギー体をいつ説得するの?」

 「まあ、そのうちね。」

 「そのうちって・・何時いつ?」

 「まあ、何時か、ね。」

 「て、何時って、何時?」

 「あ!」

 「え?」

 「リン! あれって、何!」

 「え?」


 突然、ヘッドがリンの後ろを指さした。

思わずリンは後ろを振り向く。

しかし、後ろには何も無かった。

リンはいぶかしんで、後ろを向いたままヘッドに聞く。


 「何もいないけど?」


 そう言ってリンは、再びヘッドを振り返る。

居ない?


 「あれ、シャンさんの旦那さん? あれ?」


 リンの目の前から、ヘッドは消えていた。

そうヘッドは面倒臭くなって逃げたのだ。

足の速さと、妻に謝る速さは電光石火の男、それがヘッドであった。


 「やられた・・、でも、どうすんだろ?」


 そう呟くと、リンは仕方なく自分の家に戻って行った。

ヘッドはリンが家に戻るのを物陰から確認すると、再び散歩に戻った。


 「さてとどうしようかな、今日は鳥でも追ってみるか。」


 そう言って空を見上げた。

するとカラスが電柱の上から、此方こちらをみている。

ヘッドはカラスに語りかけた。


 「なあ、何か面白い物ない?」

 「え? 俺に聞くの?」

 「ああ、君にね。」

 「へ~、カラスの俺に聞くんだ。」

 「うん、だって君、鳥の中では頭よさそうだしね。」

 「よくわかるじゃん、カラスは優秀な種族で、さらに俺は天才よ。」

 「そうみたいだね。」

 「ああ、もしかしたら人間以上だね。」


 この言葉にヘッドは何も言わなかった。

下手にいうとへそを曲げたり、逆恨みしてシツコク狙われるかもしれない。

ここを歩く度、追いかけられたらたまらない。

そういう点では、執念深さは鳥も人間も同じだ。

人間なら国同士の争いの歴史が物語る。

それは日本という国が周辺から未だにせめられているのと同じだ。


 「良い物見せてあげるから付いてきな。」

 「ああ、分かった。」


 カラスはそういうと、空に飛び立った。

ヘッドはその後を追う。

暫くついていくと、前方にとんびが飛んでいた。


 「なあ、ちょっとあいつを追いかけ回してくる。」

 「え? なんで?」

 「理由なんてないさ、気にくわないのさ。」

 「どうして?」

 「なんかさ、空をで優雅に飛んでるからさ。」


 そういうとカラスは速度と高度をあげ、輪を描いている鳶に突っ込んだ。

鳶がカラスに抗議をする。


 「わわわわ! な、なにすんだよ!」

 「うるせぇ! 誰に断ってここを飛んでんだよ!」

 「い、いいがかりだ! ここは自由な空だ、人間のばかげた領空権なぞないぞ!」

 「ふん、俺が法律だ!」

 「わわわわ、やめろ! お、おれは戦争反対!」

 「ふん、力のある俺に無力のお前が何を言っている!」


 ヘッドはこの様子をあきれてみていた。

鳶の方が体も大きく、力がありそうなのに追い払われている。

人が良い、いや鳥がよいというのか、優しいというか気が小さいのか・・。

暴力に屈しやすい鳥だなぁと、眺めていた。

仲裁はする気は無い。

なぜならヘッドには利益も不利益もないし、義理もない・・。


 やがて鳶はカラスに追い払われた。

鳶としては、いい猟場を失うことになるだろうに。


 カラスはヘッドの所に戻ってくると、さらに先をめざす。


 「なあ、鳶がいた場所、君の餌場なの?」

 「いいや、そうじゃないけど。」

 「気にくわないだけで追い払っただけなの、ほんとうに?」

 「う~ん、それもあるけど、この場所もあるにこした事はない。」

 「今の君の餌場だと不足だったのかい?」

 「いや、そうじゃないけどさ、縄張りは広いほどいいだろ?」

 「ふ~ん、欲張りなんだね。」

 「ああ、そうだよ。」


 そう言って、さらに2km程先飛ぶ。

そこの雑木林だった。

カラスは、その雑木林に降り立った。


 「ここが君の良い物がある場所か?」

 「ああ、あそこさ。」


 カラスが指し示した場所には、針金やら、ハンガーやら、プラスチックの欠片が散乱していた。


 「どうだ、いいだろう?」


 ヘッドには何がいいのかわからなかった。

しかし、ここまで連れてきた鳥に否定をするのは不味いと思った。

ちゃんと社交辞令ができるヘッドであった。


 「ああ、すごいね、これ。」

 「だろう! この光り方、光沢、きらびやかさ、ふふふふふ。」


 ああ、そうか、光っていればいいんだ・・。

収集癖しゅうしゅうへきとう奴だ。


 「今日はいいものを見たよ。」

 「ああ、有り難く思えよ!」

 「ありがとう・・。」


 そう言ってカラスと別れた。

別れて上空を飛んでいたら・・


ガン!!!


 凄い衝撃とともに、はじき飛ばされた。

それも、上下左右が分からないほど回転をしながらだ。

目を回しながら、ヘッドは、すごい勢いで弾き飛ばされ続けた。

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