第7話 名前がたくさんある生き物
ヘッドは騒いでいる老人の側にむかった。
「お~い、玉~、たまや~い・・」
「あなた、放っておきなさいな、フラット帰ってくるわよ。」
「まあ、そうは思うけど・・二日も帰ってきていないんだよ。」
「何言ってるの、4日位、姿を見せなかったこともあるでしょ?」
どうも猫という動物を探しているらしい。
でも、その玉と呼ばれる猫は3件ほど先のアパートの一室にいる。
なぜわかるかって?
だから、私達はエネルギー体で思念による会話をしているんだって。
だから知り合い同士などは、共振することで思考が読めるんだ。
え?会話はテレパシーじゃなかったかって?
君達の会話って1種類しかないのかい? へんなの。
まあいいや、猫の飼い主と、玉は精神的な繋がりがあり、波動が共鳴しているから分かるんだ。
で、玉は、というと・・
ゴロゴロ・・
喉を鳴らしながらアパートの1室の炬燵の中で丸くなっていた。
このアパートの住人の思考を読むと・・
久しぶりにニャン太が来るんだもの、まあいいわ。
可愛いから許しちゃう。
買っておいたツナ缶をぺろっと食べたと思ったら丸くなるんだもの。
でも、どこに行っていたのかしら? ニャン太は・・
ヘッド 「おいニャン太!」
猫 「あん? 誰、あんた?」
ヘッド 「おれ? おれは通りすがりのエネルギー体だよ。」
猫 「ふ~ん、じゃあね、俺、寝るから。」
そう言ってニャン太? いや玉? なんで名前が幾つもあんだよ、猫って!
まあ、いいや猫って呼んでやろう・・・
この猫、俺の問いかけに答えず、欠伸をしたと思ったら丸くなって
おれ、バカにされてんのかな・・
よし、それじゃあちょっと気合いを入れて会話してみますか・・
ヘッド 「わっ!!!」
猫 「ギャっ! ニャにゃニャにゃ!!! なんだよ、お前!!」
ヘッド 「だって君、俺を無視すんだもん。」
猫 「五月蠅いやつだな~・・・で、何、おっさん?」
ヘッド 「な! おっさん! 俺、おっさん?」
猫 「なあ、おっさん、なにアタフタしてんのさ? 俺に用事だろう?」
ヘッド 「あ、あああ、あのさ、玉って叫んで探している人間がいたぞ?」
猫 「あ、そう。じゃあ、お休み・・」
ヘッド 「お休みじゃないだろう!! 無視していいのか?」
猫 「五月蠅いな~、いいの、いいの、あの家は。」
ヘッド 「どういう意味だい?」
猫 「あそこは1週間位、お世話になったら別の家に行くことにしてんだ。」
ヘッド 「?」
猫 「餌はいいんだけど、猫かわいがりが鬱陶しいの、あそこ。」
ヘッド 「ふ~ん、で、脱走中?」
猫 「失礼な、おいらは気が向くままに生活してんだ。脱走じゃないよ。」
ヘッド 「? まあ、そうならそうでいいけどさ、あの老人、ほっといていいの?」
猫 「いいの、いいの・・、また次回行ったらスリスリして臭い付けてあげるか ら。」
ヘッド 「え? 臭いをつけると喜ぶのか?」
猫 「うん、頬をこすりつけると喜ぶんだ。」
ヘッド 「へ~・・・そうなんだ。」
猫 「わかったら消えてくんない? 五月蠅いから。」
ヘッド 「え? あ、その前にさ、名前、なんで沢山あるんだ?」
猫 「名前? そんなの人間が勝手に付けているだけだもん、
知ったこっちゃ無いよ、
玉とか、ニャン太、ニャン、チョコなどなど色々言われてるよ。
じゃあね、お休み。」
そういうと猫は本格的に丸くなり、前足で顔を覆い尽くした。
どうも、これ以上は答えてくれそうにない。
これは面白いかもしれない。
人間探訪を後回しにして、それ以外の動物でも訪ねてみようかな・・
そう思い、ヘッドはアパートのその部屋から出た。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます