第10話 緊急事態とは・・

 リンは焦っていた。

早く緊急事態を告げて、協力を仰ぎたい。


 しかし、シャンのマイペースにはまってしまいどうしようもない。

目の前のお茶を飲まないことには、シャンは話しを聞いてくれそうも無いのだ。


 だからといって、リンがお茶を慌てて飲もうとすると、シャンはリンをたしなめた。

まあ、その前に舌を焼けどして、ヒ~ヒ~とリンは騒いでいるのだが・・。


 「はい、お水、慌てるんだから~もう~。」

 「ひみまひぇん、あふぃです、この、おはわ・・。」

 「お茶は熱いに決まっているでしょ!」


 シャンは地球に来たばかりで、お茶のお湯の適温ということを知らない。

だから沸騰したお湯を入れればよいと思っている。

ここでリンが、そのことを話したら話しがややこしくなると判断した。

学習する子である。


 お茶をフ~フ~しながら、なんとか呑みきる。

一度やけどした舌はピリピリとするが、それどころではない。

リンはシャンに再び要請した。


 「ご亭主、呼び戻して下さい!!」

 「あら、そうだったわね、忘れていたわ~。」

 「では、直ぐに・」

 「お茶、お替わりする?」


 リンはガクっとなった。

いや、ここで! そう、心に誓った。


 「いえ、結構です、よれよりも旦那様を!」


 エネルギー体同士の会話は、波長の共振により行われる。

その会話のための周波数は、夫婦になると特別なものだ。

夫婦間で離れた場所で会話をするためのものとも言える。

リンでは他人の夫など呼び出せないので、シャンに頼むしかなかったのだ。

リンはともかく、シャンとヘッド(シャンの旦那さん)に話しをしたかった。


 「あら、そう・・、急いでいるのね?」

 「だ・か・ら、緊急だと!」

 「あら、あら、じゃあ呼ぶね。」


 そう言って、やっとシャンはヘッドを呼んでくれた。

すると、すぐにヘッドは戻って来た。

それも、アタフタと。


 リンは、なにやらヘッドがシャンの呼びかけに即座に答えないと大変なことになると予想ができた・・、この様子を見たら誰でもそう思うだろう。


 「はぁ、はぁ・・、な、何、か、あった、ぜぃ、ぜぃ・・・う、苦しい!」


 急ぎ過ぎで有る。

いや、急いでくれないと困るのだが、多少は同情するリンであった。


 「よろしい、直ぐに帰ってきたのは褒めてあげる。」

 

 ゼィゼィと喘ぎながら、ヘッドは恭順の意を示す。

うん、まるで飼い犬が呼ばれたみたいだ。


 「で、何? 俺、今、キツツキなるものと話していたんだけど・・。」

 「あら、そう・・、キツツキって何?」

 「いや、これが面白い生き物でさ、木をついて・」


 「まった~!!!! その話しは今必要じゃないでしょ!!!」


 「おや、リンじゃないか、今日こんにちは。」

 「あ!・・、すみません、挨拶がおくれて、今日は。」

 「いやあ、この辺りの散歩は気持ちいいし、色々な生き物と出会えて面白ね。」

 「うん、そうでしょう! 場所といい住居といい、いいでしょう。」

 「うん、リンのお陰だよ。」

 「でしょ!・・・、あれ?」

 「それでさ、キツツキが・」


 「ちが~う!!!!! 人の話を聞け~!!!!!」


 「ん? シャン、リンが壊れているけど?」

 「そうなのよね、近頃の若い子は壊れやすいのかしら?」

 「う~ん、どうなんだろう?」


 「五月蠅いうるさい!!! 人の話を聞け!!」

 「あら?」

 「え?」


 そこでやっと、ヘッドと、シャンは頭に ?マークを掲げて、リンの話しを聞くきになったようだ。


 「緊急なの!」

 「へ~・・。」

 「あら、そういえば、そう言っていたわよね?」


 リンはガクリと肩の力が抜けた。

抜けるなんてものじゃない・・。

この二人を相手にするのが馬鹿らしくなる。

でも、この二人の力が必要だ。

決意を新たにして、二人に協力を求めることにした。


 「あのね、太陽に注意を向けてみて。」


 その言葉にヘッドと、シャンは怪訝な顔をしながら、言われたとおりに注意を向ける。


 「おや?」

 「あら?」


 「気がついた?」

 「ああ、波動が乱れ始めているな~・・。」

 「そうね、それもイヤな方向に・・。」

 「でしょ? どう思う?」


 「そうだな~・・、たぶん大規模なフレア(※1)が発生するかな?」

 「私もそう思うわ・・。」


 「うん、だから二人に知らせに来たの!」

 「へ~、ありがとう。」

 「うん、分かったわ、じゃあ、お茶のお代わりを・・」 


 「ちが~う!!!!」

 「あらあら・・。」

 「?」


 「フレアが地球を襲ったらどうなる!!! ねぇ! どうなる?」

 「そうよね~、たぶん、地球生命体のほとんどは助からないわね。」

 「あ、そうか、それは大変だね。」

 「でしょ、お茶は何がいい? ヘッド。」


 「だ~!!!! ちょっと、よく考えなさいよ!」

 「え?」

 「あら?」


 「いい、今、住んでいるのは何?」

 「ん? 人間だけど?」

 「そうよね、それが何か?」

 「で、フレアが地球を襲ったら?」

 「まあ、死ぬよね。」

 「うん、死ぬわね。」

 「そうしたら、あなたたちの住居は?」

 「まあ、無くなるよね。」

 「そうよね。」


 そして、ヘッドとシャンはお互いに目を合わせ、肩をすくめた。

そして、暫くすると、まず最初にヘッドが・・


 「え!!! ヤバいじゃないか!!」


 その言葉に一瞬、シャンはポカンとした。

そして暫く考えた後、ハットして叫んだ。


 「きゃ!! 大変じゃない、早く言ってよ、リン!!」


 だから、リンは緊急だとずっと言っていたのだが・・・。


======

フレア : 太陽フレア

太陽がたまに局所的に爆発を起こす現象。

過去に地球まで届く規模のものが発生している。

もし、地球が飲み込まれたら・・。

フレアについて短くまとめて書くのは私には無理です・・ご容赦願います。

詳しく知りたい方はwebサイトでお調べ下さい。

またNHKで特集していましたのでアーカイブで見られるかもしれません。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る