第11話 科学者は、あたふたと

 地球を代表する科学者達は頭を抱えていた。


 太陽の観測衛星・ひのでを筆頭に、各国の衛星、地上観測から、太陽の電磁波、コロナの観測を通して、大規模な太陽フレアが地球を襲う確率が95パーセントと弾き出したのだ。


 そのため国際会議が緊急招集され、科学者は討論したが、ほとんどの科学者は太陽フレアに対する対策が見いだせなかった。

シェルターに頼るしか案がない。


 この科学者達の会議結果は各国の要人に報告された。

各国は核戦争などに極秘に建設した地下シェルターへ避難する人材の選定に既に極秘でかかった。

国際会議が始まる前に、既に選定に入った国もあったようだ。

その選定であるが、多くの国では《言わずもがな》》の選定である。


 日本では、国会で議員が召集され非公開の会議を行っていた。

それは太陽フレアによる地球的規模の災害を国民に知らせるかどうかである。

このような些末なことを、さも、真剣な顔をして議論をしている。


 考えてみてほしい、国民が暴動を起こそうが、今から核戦争が始まろうが、太陽フレアが襲う脅威に比べたら子供のお遊びだ、規模が違いすぎる。

報道をしなかったという批判を怖れる意味がない。

その批判ができるのは、人々が生きていればの話しで有る。

何という税金の無駄遣いであろうか。

まあ、その税金も絶滅すれば意味がないのであるが・・。


 そして議員の多くは、自分達はシェルターにという皮算用がある。

その議員を横目でみながら官僚は冷たい視線を向ける。

人選をするのは官僚である。

国会議員は権力でなんとかなると思っているようだ。

そんな官僚の思惑など感じることもなく、国会議員は議論をかわしていた。


 そのころアメリカでは、既にコンピュータによるシェルターへの避難する人選が完了して、極秘裏に対象者を非難させる対策を行っていた。

もし、選ばれた人をねたんだり、選ばれた人が死ねば自分がシェルターに入れると思った人達が、選ばれた人を襲う危険性があったからだ。


 そして国によっては権力者と、その家族、親族、官僚だけが避難対象となった。


 各国は自国の当面の食料など、極秘裏に大量に安全な場所にストックを行いはじめ、食料品の高騰を招いた。

そして、各国の放送局は食料危機というタイトルで放送をするのだった。


 こんな様子を宇宙人が見たらどう思うだろうか?

おそらく滑稽にみえるだろう。

人間の利己主義をあざ笑うかもしれない。


 いや、実際に地球に沢山の宇宙人がおり、一部の宇宙人はあざ笑っていた。

だが、地球人は宇宙人が地球に来ていることを知らないので幸いである。

いや、一部の地球代表者は宇宙人と接触しており、このことは知っていた。


 その宇宙人であるが、ある種の交換条件で技術や、文化を教えることはある。

当たり前といえば当たり前なのだが、地球人のために無条件で情報は出さない。

それは地球人同士でも、国と国の利益を考えて実際行っているのだから、批判はできないだろう。

しかしながら、宇宙人から太陽フレアから守る方法を教えて貰える可能性はあった。

ただし、それには対価がつきものだ。

おそらく国家予算ほど価値のあるものを請求されるだろう。


 その宇宙人であるが、太陽フレアが起こっても困らない。

彼らは宇宙を飛び回る技術もあるし、宇宙船の技術を使えば太陽フレアなど無意味だ。

太陽フレアで困るのは地球生物だけである。


 宇宙人は宇宙法なるものを重要視する。

地球にいる宇宙人は多種な星系から来ているため、文化も違えば考えかたも違う。

彼らは大雑把な宇宙法なるものを交わし、交流をし、別惑星に移住したときに争いがおきないようにしている。

その宇宙法には他惑星の生物を助ける義務はない。

それが太陽フレアによる災害であってもだ。

なぜなら、自然現象により生物が滅びるのは仕方がないことだという理念がある。

ただし、手を出していけないとは書いてない。

この宇宙法は、他星人と交易や技術供与を行うときについても定められている。


 アメリカ政府は、この宇宙法なるものを手に入れていた。

アメリカ大統領、および武器商人達は、宇宙人の技術が欲しくて交渉するために手に入れたものだ。

過去には宇宙人の技術を手に入れるため、同胞や他の国の人間をモルモットとして提供したこともある。

当然、これは国家機密であり公表されることはない。

できるはずがない。

まあ、過去には、と、いってもそれが現在無いかというと・・・・。


 アメリカ政府は、国内に住んでいる宇宙人に太陽フレア対策の技術が欲しいと交渉をした。

しかし、宇宙人にとって興味がなかった。

なぜなら、別に地球生物が滅んでも困らない。

滅んだ後でも彼らは地球を利用できるからだ。

それにアメリカ政府が提示する見返りは、技術を与えるだけの価値はなかった。

メリットを感じない宇宙人はアメリカ政府を無視した。


 一方日本であるが、アメリカ政府以前の問題に直面した。

宇宙人に頼むためには憲法の改正が必要だった。

さすがに、太陽フレアや、宇宙人のことは国民に知らせることはできない。

その公表をするかどうかの会議をしていて結論が出ず、空転している最中だ。

そのことを隠して憲法改正しようとしたが、9条を守れというトンチンカンな世論が放送され、それがやがて反対集会に発展した。

政府は9条は改正しないと説明しても、なぜか9条を絡める放送に苦慮した。

政府は身動きがとれなくなった。

また官僚は官僚で、この案件をどの部署が行うかの利権争いと、お役所仕事の書類作りに奔走していた。

太陽フレアに飲み込まれれば、すべてが無意味だというのに・・。

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