第16話 ヘッド、飛んでいっちゃった・・でも・・

 ヘッドは、すごい勢いで弾き飛ばされ続けた。

目がまわるなんてものではない。


 気がつくと、小さな島にいた。

どうやら地面に落ちているようだ。

ボ~ッ、としていると、足下から声がかかった。


 「ふん、気がついたか。」


 歓迎していないという感じではない。


 「あの?・・、ここは?」

 「ここは人間でいう南大東島みなみだいとうじまだ。」

 「北海道にそんな島あったっけ?」

 「バカか、ここは北海道じゃない。」

 「え? 北海道じゃないの?」

 「ああ、違う。」


 「どこにあるの、この島? アメリカ?」

 「日本だ、沖縄の近くといえば分かるか?」

 「わからんけど、まあ、日本ならいいや。」

 「適当な奴だな・・。」

 「いや、それほどでも。」

 「褒めてない!」

 「え? そうなの?」

 「ふん、やつだ。」


 「えっと、ところで、どうして俺はここにいるのだろうか?」

 「お前、全然気がついていないのか?」

 「え? 何が・・。」


 ヘッドがそう言うと、呆れた顔をされた。


 「あのさ、何か知っていたら教えてくれる?」

 「しかたがないな・・、説明してやるから納得したら帰れ!」

 「あ、ああ・・。」


 「お前が空中にいるときに、日本海側で日本の自衛隊の飛行機が飛んでいた。」

 「飛行機? ああ、あの空を飛ぶオモチャか・・。」

 「その自衛隊の飛行機に、某国のイージス艦がレーダー照射を放ったんだ。」

 「レーダー・・、あ、電磁波を照射したということか。」

 「そうだ、レーダー照射にお前は打たれた。」

 「あ~、そういうこと・・、打たれて弾き飛ばされたんだ。」

 「分かったか?」

 「あ、うん、まあ状況は。」


 「じゃあ、帰れ!」

 「ところで、じえいたい? いーじす? 何それ?」

 「ふん、人間が作った戦争をするための道具だ。」

 「・・そうなんだ。」


 「お前、何も考えずに空を飛んでいただろう?」

 「え? ああ、そうだけど?」

 「いいか、この惑星は平和ではない。

 そしてこの国はやたら電波を利用する。

 電話にしても、家電製品にしても、宇宙船にしてもだ。」

 「うん、ちょっと僕らには、いただけない雑味だね。」


 「それで厄介なのが戦争のオモチャだ。」

 「ああ、先ほどいっていた何とかとか?」

 「ああ、あのオモチャは嫌な電磁波だったり、瞬間的にパルスを出す。」

 「?」

 「わからんのか?」

 「ええっと・・。」

 「はぁ・・、要は無防備で飛んでいたり、たゆたうと今回の目に遭う。」

 「あ、そういうことね、気を付けるよ。」


 相手はヘッドの言葉にジト目で見つめる。

ヘッドの様子から、本当に理解してはいないと察したからだろう。

やがて相手はどうでもよくなったようだ。


 「分かったら帰れ!」

 「え~っと・・・。」

 「仲間がいるなら、相手の位置はわかるだろう。」

 「まあ、そうなんだけどさ・・。」

 「なんだ、何かあるのか?」

 「この星が太陽のコロナで焼かれそうなの知ってるよね?」


 そうヘッドが話すと、相手はヘッドをジッと見据えた。

どうも、ヘッドのことをよく思っていないようだ。


 「お前、この前、ブロードキャストでバカやった奴だろ?」

 「あ、やっぱり聞いてくれていたんだ。」

 「俺には興味がない。帰れ。」


 「あんたがリンに人間に住むことを勧めたんだろう?」

 「リン? ああ、アイツか。」

 「でも、リンから貴方はかなり離れたとこに住んでいると聞いたんだけど?」

 「ふん、自分の居場所を知らせる必要があるのか?」

 「もしかして、空間を屈折させて自分の居場所をわからないようにした?」

 「そんなことはどうでもいい、もう帰ってくれ。」

 「あ、うん・・、助けてくれて有り難う。」

 「礼なんぞいらん、出て行け。」


 「あ~・・、でもさ・」

 「俺は手をかさん。出て行け。」


 「あのさ、名前くらい教えてよ。」

 「そんな義務はない。」

 「いや、義務とかさ、そんなんじゃなくてさ・・。」

 「五月蠅うるさいい奴だな~。」

 「いや、それ程でも・・。」

 「いっとくが、褒めていないぞ。」

 「そうなの?」

 「・・・。」


 「で、名前は?」

 「はぁ~、教えるから出て行け!」

 「な・ま・え。」

 「・・・スタンだ。」

 「スタン?」

 「ああ・・。」

 「もしかして、あの冒険家?」

 「・・・知っているのか?」

 「ああ、有名じゃないか!」

 「ふん! 昔の話しだ。」


 「じゃあ、なぜジャックさんに会いにいかないの?」

 「なに!!」

 「ジャックさん、大変なのにさ。」

 「どういう意味だ!!」


 スタンはヘッドに飛びつき、胸ぐらを掴んだ。

その剣幕にヘッドは驚き動揺する。


 「ジャックは何処どこやがる!」

 「わわわわわ!」

 「どこに居やがんだ! 吐け!」

 「ぐ、ぐるじ!」

 「何処だ!」

 「ぐ、ぐ・・」


 ヘッドは胸ぐらをつかまれ、襟が首を締め付けていた。

そのため・・

気をまた失った。


 「おい! 起きろ!」


 バシッ! という音とともにほほに痛みが走った。


 「・・い・・たい」

 「起きろ! こら!」


 体をグラグラと揺すられ、頭がガクガク揺れた。


 「シャン、もう少し丁寧ていねいあつかってくれよ・・。」

 「何寝ぼけてやがる! 起きろ!」

 「ん・・・・?」


 ヘッドは気がついてハッとした。

胸ぐらをつかまれたままだ。

スタンと目が合う。


 「あの・・苦しいんですが?」

 「五月蠅うるさい! ジャックは何処どこにいやがる!」


 そう言って、また胸ぐらを掴んだ手で揺する。


 「グェッ! ギブ、ギブアップ!」


 ヘッドは胸ぐらを掴んでいる手をベシベシと叩いた。

すると、胸ぐらを掴んでいた手をスタンは急に話した。

結果として、ヘッドはよろけて背中から地面に落ち・・・


 「ぐぇっ!」

と、なる。

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