第14話 もう一人のエネルギー体

 ヘッドのブロードキャスト通信を聞いていたエネルギー体がいた。


 そう、リンに対し、冷たい態度をとるエネルギー体だ。

ヘッドとの会話を聞いていて、思わず呟いた。


 「物好きな奴がいたもんだ。」


 彼は地球に来て100年くらいになる。

宇宙人としては新参もので、リンからみると古株さんだ。


 彼は宇宙冒険家で気ままに一人で生きてきた。

妻を持つ気はさらさらなく、また人(エネルギー体)と付き合う気もない。


 彼にはかつて冒険仲間がいた。

今から約480年前だ。

二人で隕石に乗って気ままに宇宙の深淵を探索したり、新星爆発の電磁波による波乗りをしたりして楽しく遊んでいた。


 そんなある日のことだった。

相棒のジャックは、彼を残し突然いなくなった。


 書き置きも何もない。

争った形跡もない。

忽然と消えたのだ。


 彼はジャックに何かあったのかと懸命に探した。

しかし、ジャックが連れ去られたのを誰も目撃をしていなかった。

そして、ジャック自体、何も痕跡を残していなかったのだ。


 必死にジャックを探していて、やがて彼は気がつく。

ジャックに見放されたと。

それでも、それを認めるのが怖く、ひたすらジャックを探した。

しかし時間とともに、現実を受け入れた。


 やがて彼はジャックに裏切られたと考えるようになる。

そして、それがやがて憎悪に変わった。

人なんて信じられない、と、心に深く傷を刻んだのだった。


 今まで俺といて楽しいなんて言っていた・・

しかし、それは影で馬鹿にしていたに違いない。

そう思うとジャックを友人と思っていた自分が道化師に見えた。


 そのころ彼の顔(波長)は、歪んだ顔(波長)となっていた。

偶に友人に会っても、友人は彼だと気がつかない程であった。

それほど、彼は変わってしまったのだ。


 彼は二度と相棒はもたずに冒険を続けた。

一人で黙々と。

巨大ブラックホールに潜り込み、別星系にダイブしたり、パルサーに接近しジェット噴射でバンジージャンプを行ったり、考えうる一人遊びの冒険を楽しんだ。

だが、やがて冒険に飽きた。


 なにもやる気がしなくなり、有る星の超新星爆発の波に体を委ねた。

そしてその波が消えると、側を通りかかった彗星に乗り込んだ。

そして辿り着いたのが地球だったのだ。


 地球には自分にあった地場を発生させる岩などがないため、生物の体を借りることにした。

住んでみるとなかなか居心地がよい。

しかし、いかんせん地球人の寿命は短い。

また、馬鹿げたことに同じ種族で戦争を行い、多数の死者を出す。


 まあ、あまり生物の頂点が多すぎるのも問題だから丁度いいのかもしれないが・・。


 それにしても戦争がこれほど好きな生物も珍しい。

そこで地球を調査した。

それで分かったことがある。


 ある時、地球に自分達の種族の大部分の移住を決めた宇宙人がいた。

しかし地球にはすでに類人猿が跋扈ばっこしていたのだ。

そこで類人猿が滅びるように、遺伝子に戦争を定期的に行うようにした。

その当時、まだ宇宙法が適用されない領域にあったため問題視されていない。

類人猿が進化しても、優秀な遺伝子操作のため戦争遺伝子は継承され、やがて人間が誕生した。

この人間、繁殖力が旺盛な上に、今までの類人猿より好戦的だった。

しかし、何故か戦争をしても人間は絶滅しなかった。

おそらく文明が未発達だったおかげだろう。


 この戦争遺伝子は、定期的な戦争で人間が減ることで、別の生物が絶滅しない役目も果たしている。

このことは、遺伝子操作をした宇宙人達は意図していなかったことであろう。


 その遺伝子操作を行った宇宙人であるが・・。

皮肉なことに、地球移住計画中に、母星が隕石の直撃を受け崩壊した。

なんでも、隕石到達までの計算を間違えて、地球移住前に滅んだようだ。

地球で遺伝子工作をした工作員も、へんぴな地球に居るのがいやで母国に帰って居たときだったらしい。

そのため、その遺伝子操作を行った宇宙人は今は宇宙のどこにもいない。


 まあ、そのような歴史がある地球だ。

人間が戦争で死んだり、寿命で死んだりとするため、なんどか家移りをしていた。

そんな有る日に、リンが地球に拉致されてきたのだった。

なんか泣き言を言ってきたが、かかわるのは真っ平なので、突き放したのだった。


 ブロードキャストを聞いていて、こいつら何で人(エネルギー体等含む)なんて信じて協力したり、助けあっているのだろうと思う。

いつかは裏切られるだろうに。

まあ、助けたあげく、裏切られるまで、こいつらは分からないだろう。

そう思い、モヤモヤした気持ちを落ち着かせていたのだった。

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