マゴット

　小さい頃、「世界まる見え」か何かで、皮膚から蛆がわくエピソードに遭遇してからというもの、悪夢と言えば「蛆虫」が連想されます。
　この物語は、悪夢を細部まで表現したような、恐ろしい話です。恐怖体験に興味のない方は、やめておいた方がいいかもしれません。逆に、ホラー好きには堪らない短編となっています。
　面白かったです。二回目は無いと思いますが、面白かったです。

小学校の頃の時分の話である。
校庭に埋められた猫の死骸に幾匹もの蛆が這いずるのを見た。それが私の恐怖の原風景だ。

ADHDの人間はゴミの処理を疎かにしてしまうのが世の習い。習いとはいうがやりたくてやっているわけではもちろんない。気づいたらそうなっているだけだ。
実家暮らしをしていたら家族が最悪の事態になる前に始末をしてくれるのだが……人暮らしになってからは部屋の掃除が難しくなってしまった。
特に困るのが生物の処理だ。いや、直近のゴミ捨てのタイミングで捨てればいいことはわかっている。わかっているが捨てられないのが私たちの病気なのだ。
そうしていると現れるのが奴ら、すなわち蝿だ。
蝿はぷーんと…続きを読む