無題

 焼け落ちたマンションの地面の、更に土の中。

 そこで蠢く蛹の姿が一つ。

 蛹はどくん、どくんと脈打っている。

 間もなく蛹の背中がひび割れて、中から何かが生まれ出でる。

 人型で、ひときわ大きいハエ。

 真夜中、土の中からセミのように這い出て来た。

 映画であったようなハエ人間と形容するにふさわしいその姿は、自分の顔を手で撫で上げながら声を上げる。

 

「待っててね。今すぐ行くから」

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マゴット 綿貫むじな @DRtanuki

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