序盤はほとんどウィザードリィ関係無いテンプレ作品だが30話辺から暴力的な文章力でゴリゴリと物語に引き込んでくる。
竜人、女王、師匠、アザトースといったボスとの状況が一転二転する見せ場だらけの熱い戦い、設定には既視感こそあれど凄まじい文章力によって生き生きと動き出すキャラクター
最終章後半からwizwizしはじめるのでそこを是非読んで欲しい。特に最終盤の展開の巧みさは隣り合わせの灰と青春に匹敵する。
分かりやすく文章力の高さを見せつけられるため自分ではこの一言やこのエピソードを入れられるか、こんな言い回しができるか、こんな自然に会話をさせられるかを考えて苦しくなった。
蘇生が可能な世界で愛する人が死んだなら、あなたはどうしますか?
それは自分の中にある ”愛” が試される瞬間であろう。
ただただ悲しみに耐える日々を送るか。
それとも狂犬のように暴れ回って、遮二無二に愛する人を生き返らせるか。
主人公はそのどちらでもない。
淡々と、クレバーに、そして一直線に愛する人の復活へ突き進む。
この物語の魅力はなによりも、その愚直なまでにぶれない姿勢である。
主人公がぶれないため、物語も地に足がついている。騒がしくない。
落ち着いて物語に没入することができる。
読書好きには重要な点だ。
作者がウィザードリィ好きなのは同好の志としてとても共感できる。
あのゲームで想像力を刺激され、自分の中で物語を紡いだ人ならば、大いに楽しむことが出来るだろう。
灰は灰に……塵は塵に……。
囁き……祈り……詠唱……念じろ!