平和を取り戻した後の世界で、英雄たる亡き父を思う息子の物語。
異界からの侵略者を討ち滅ぼした後の世界を描いた、壮大なスケールの異世界ファンタジーです。
本作の主人公自身は平和な時代を生きているのですけれど、その「平和な時代」を手にするまでの歴史の厚みが魅力。
主人公の回想として語られる、世界の命運をかけた大きな戦。
それは〝そこで活躍した英雄たる『父』の物語〟でもあるのですけれど、でもそれ以上に世界全体の歴史としての側面が大きいところが特徴的。
大状況、あるいは世界そのものを描いた、スケールの大きなファンタジーです。
大きな物語の存在する中で、しかし語り部はあくまでも『英雄の息子』。
戦で命を落とした父の墓を参り、その偉大さに想いを馳せる、この親子の関係性というか特別な機微のようなものがたまりません。
大きな歴史も魅力ですけど、やっぱり真ん中にある登場人物個人のドラマが大好き!
現実とは異なる世界のありようが楽しい、まさにファンタジーといった趣の作品でした。