エピローグ
数日後。
マンション炎上のニュースが各所で報じられていた。
マンションは全焼となり、焼け跡からは何も残らない程の激しい炎上であったことが伺える。まだ周辺は煙臭く、住処を追い出された住民の恨み節がニュースで流れていた。
犬養は放火の現行犯で逮捕された。
しかし今は精神病院に入院している。
精神錯乱状態で取り調べ出来る状態では無いらしく、ある程度治る見込みも無いという。
医師の言うところでは、恐らく今後の人生はずっと病院だろうとのことだ。
彼は白い部屋の中で、天上を見上げながらぶつぶつと呟いている。
「蛆がまだ顔から出てくる。俺の顔を食い荒らそうと皮の下で蠢いていやがる」
彼の顔は重度の火傷で、そこに虫がいたかどうかすらの判別すらつかない。
少なくとも彼を改めて診た医者は、顔に蛆が居たかどうかははっきりしないと診断を下した。
時折叫び声を彼は上げるが、誰かが魚を食べて来た時だという。
匂いが誰かを想起させるらしく、そうなると狂乱して手が付けられない。
拘束具を掛けて鎮静剤を打ち、おとなしくなるまで放っておくしかないのだ。
彼は包帯越しに顔を掻きむしっては、蛆の幻影を見ていた。
焼け落ちたマンションの捜査が終わり、焼けた場所はしばらくどうするか未定となっている。
犬養が遭遇した女の遺体は、ついには見つからなかった。
無数の蠅や蛆の残骸はかろうじて確認できたらしい。
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