その感触、マシュマロの如し

すっごく楽しみにしていた北京ダックもきて、北京ダックって豚じゃないの?!と謎の驚きをしていたキミを放置して御手洗へと立った。


喫煙スペースの前を通り、奥まった所に御手洗はある。

ほろ酔いで足取り軽く御手洗に向かっていけば喫煙スペースには見た事ある人の姿。

Honeyの蘭ちゃんが心底辛そうな顔でタバコをふかしていた。

(あー…蘭ちゃん…めっちゃやさぐれてるじゃん…疲れたんかな…)

一緒のレストランにいた事にも驚いたが、口から魂出てるんじゃないかって勢いで煙を吐いてるその姿は何だか人間臭くて共感を覚えてしまう。

そうだよね、アイドルだって人間だもんね。

ニコニコしてるのも中々しんどい。

プライベートっぽいし声掛けないでそっとしておこう、そしてやさぐれた顔もそっと心にしまっておこう。

そんな事を思い、喫煙所を横切ろうとした瞬間に蘭ちゃんと目が合った。

口をパカン、と開け慌ててタバコを吸い殻入れに捨てた蘭ちゃんが必死の形相でこちらに向かってきた。

「あ、あの!!ちが、違うの!た、タバコとか普段吸わないから!」

いつも話し掛けるとのんびりと話してくれる蘭ちゃんとは思えないほど早口で捲し立てられる。

肩を掴まれガクガクと揺さぶられた。

別に喫煙くらいじゃ引かないし、他の人に言いふらそうとも思わないのに…。

この子達には些細な事ですらがファン離れの原因になっちゃうんだろうな。

「あの、大丈夫…気にしてないから!」

うんうん、タバコくらい誰だって吸うよね!

ずっと24時間アイドルでいろなんて疲れちゃうもんね!

何だかフォローになってるんだかなってないんだかよく分からないフォローを入れれば、肩を掴んでいた蘭ちゃんに抱き締められた。

「うわーん…めっちゃ神ファンじゃん…」

私より少し身長の高い蘭ちゃんはヒール履いてるせいで更に身長が高くなっていて、抱き締められるとちょうど胸の位置に顔が当たった。


蘭ちゃんの控えめなお胸がふかっと両頬にあたる。

あー。チビでよかった。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る