推しが可愛い
あかりちゃんがこっち見てるぅ~!!!!
ひぇあぁぁぁぁっ…と変な声を出しそうになるのをグッと堪えて、また「お前なんか見てねぇよ」って思われても嫌だけど、とりあえず知り合いと目が合ったら手を振りたくなる法則に則って小さく手を振った。
キミは依然、後輩だというアイドルの子に抱きつかれてむぎゅむぎゅされている。
痩せているけれど若さの象徴ともいえるむちむち感が残っていて健康的。
非常に魅力的な女の子だ。
その子のグループのマネージャーさんらしきパンツスーツの女性に、よかったら皆さんで…と飲み物を渡したら意外そうな顔をされた。
後輩とじゃれあっているキミを微笑ましく眺めているも、ずっと左頬の辺りに突き刺さる視線が痛い。
横目で視線を感じるほうを見れば蘭ちゃんと横並びに座り、スマホを握りしめたままこっちを凝視しているあかりちゃんと目が合った。
今まで何回かライブハウスの物販などで会話をしたりしていたり、差し入れを渡していたから覚えててくれたのかな。用意も終わってるみたいだし、少し話し掛けても大丈夫かな。と恋する乙女みたいな事を考えてしまい、キミにちょっと向こうに行ってくる、と伝えてからHoneyの2人がいる場所に向かった。
「あ、あの、今日応援してます…暑いから体調崩さないように頑張って…」
はいっ!どもったー!かっちょ悪ー。
差し入れ分とは別に買っていたスポーツドリンクとコールドスプレーをあかりちゃんと蘭ちゃんに差し出せば緊張のあまりどもってしまいカッコをつけようとしていたのにカッコはつかず恥ずかしさに俯く。
「ありがとー」と朗らかな感じで受け取ってくれた蘭ちゃんと、普段から大きい目を更に溢れんばかりに開いているあかりちゃんの表情に更に「あー、やっちまった」と自己嫌悪に陥りそうになる。
そうだよね、スポドリとかいらないよね、もっと別のもん差し入れろよ!って思うよね…と少々卑屈な気持ちになり、あかりちゃんをちらりと見れば見開いていた目からポロポロと涙が溢れていた。
「え?!あかり、ちゃん?!」
「どうしたの?!」
泣くほどスポドリが嫌いなのかと思いオロオロとしてしまい、渡したスポドリのペットボトルをとりあげようとすれば、あかりちゃんの細い腕はギューとペットボトルを抱き締めている。
えぐえぐと嗚咽混じりにあかりちゃんから言われた言葉に蘭ちゃんと目をみ合わせれば、自然と口元が緩み笑ってしまった。
いや本人には笑えないくらい精神的に辛い事だったのかもしれないけど、推しに嬉し泣きされるってファン冥利に尽きるじゃん。
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