ハッシュタグ

地元の駅。

ここはまぁ、テレビ番組のロケとかでもごく稀に映ったりする。

10年くらい前に折れた!!と全国ネットのニュースで取り上げられるほどの餃子像もある場所だ。


電車を降りたら餃子の匂い……はする。

悲しい事に駅周辺に餃子専門店が密集してるせいで餃子の匂いはする。


そして、私の住まいがある駅は悲しきかなこの駅から1駅手前の駅だ。

誰だよ起こしてくれなかった奴。

電車は30分に1本。

数百円だが、わざわざ乗越料金を払い駅の改札口から出るのも勿体ないかなと思ったが出てしまえばスマホの通話履歴を開いて通話履歴の半分以上を占めている名前を押す。

2、3コールしてすぐに相手は出た。

電話口でごちゃごちゃ言ってる話し声を遮り「駅ビルのスタバにいるから迎え来て」

と要件だけを伝えて電話を切る。


私の地元にだってスタバはある。

いつも異常に混んでるけども。

迎えに来てもらう迄の時間をスタバでキャラメルマキアートを飲みながら過ごす。

うーん、優雅。

人目に付きにくい席を陣取り、今日の戦利品の1部を広げて写真におさめる。

スタバでキャラメルマキアートとアイドルのフォトブック。

SNS映えするでしょ。

#キャラメルマキアート

#ライブ帰り

#休日の私

みたいな気分でいこう。

残念ながらキラキラなSNSは私の腐り切ったタイムラインでは映えなし、#とか私やらない。



「…なんしてんの」


ドリンクカップを写真の隅に配置して手前にはフォトブック、という構図の写真を撮るのに必死になっていれば怪訝そうな声が頭上から降ってきた。

顔を上げれば休日の夕方の人の多いスタバにネズミ色のスエットに金髪女子。

足元は一昔前に流行ったワニのマークの黒いサンダル。

財布はもちろん、あの茶色のモノグラムが有名なあのブランド。

知ってたけど、知り合いって思われたくないこの女。

#田舎のヤンキー

#絶滅危惧種

これでSNSに投稿してやろうかな。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る