控え室で
*あかり視点*
通称ドルフェス…。
控え室には古今東西、各地のご当地アイドルの子達が集まり各々が自分の出番に備え用意をしている。
私も蘭も今回の参加で2回目だ。
ドルフェスに招待される地下アイドルはそれなりにファンを持っていたり、やっている年数の長いグループが多い。
私達もそれなりに歴は長い。
ただ、グランプリになるグループは最初から決まっていて完全なる出来レースだ。
主催者の推しがグランプリを取る出来レース。
そんな中でもグランプリを夢見て頑張っている歳若い子達が集まるグループはこの控え室の半分以上をしめている。
色々な音が混ざる控え室で蘭と隣あいSNSを開く。
『Honey』のファンはそれほど多くない。
ソロライブを開けるほど居ないのが現実で、ライブハウスにお花を出して貰えることも少ない。
"本命のついでに"推すというスタンスの人ばかりだ。
SNSの内容もドルフェスに行くよ!という書き込みは多いが、私や蘭を名指ししてくれるファンはいなかった。
少し暗い気持ちになりながらも蘭に頑張ろうね、と言えばのんびりとした声で「うん、頑張ろう」と返ってきて安心する。
開演時間が近付いてきた頃、別グループの女の子が「きゃー!先輩っ!!」と黄色い歓声をあげていて、ふと声が上がった方を見る。
口元を抑えキャッキャと喜んでいるのは、たしか、北関東でそれなりに有名なグループのセンターの女の子だ。
ベッタリとその子が抱き着いているのは見事な金髪のギャル。
招待していた人でも来てくれたんだろうな。
羨ましい…。と妬ましい気持ちを隠せずにその光景を見ていれば後を追うように入ってきた子に目を奪われた。
ライブに何回も来てくれている最近ファンになってくれた子だ。
「あ、」
視線に気付いたのか私の方を向いた彼女が私に気付き、小さく小さく手を振ってくれた。
そして金髪ギャルになにか耳打ちしてから、私と蘭の座る席に近付いてくる。
「あ、あの、今日応援してます…暑いから体調崩さないように頑張って…」
モジモジと応援してくれた彼女が冷えたスポーツドリンクと、コールドスプレーを私と蘭に差し出した。
「ありがとー!頑張るね!」
のんびりした口調でお礼を言っている蘭。
嬉しい…、ありがとう。と伝えなきゃ、伝えなきゃ。
「…え?!あかり、ちゃん?!」
「どうしたの?!」
彼女と蘭が慌てた声を出していた。
ポロポロと涙が止まらない。
「ご、ごめん…なさい、嬉しくて…誰も来てくれないかと思ってた…」
せっかくのメイクも涙でよれてしまう、と思っても不安に押し潰されそうだった、と口に出してしまえば年甲斐もなくワンワンと泣いてしまった。
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