私の持てる最大限の力
驚きから表情を変え、訝しげな目を向けてくる蘭ちゃんにニヤリと笑みを浮かべてみせる。
「…使えるコネがあるから」
訳が分からない。といった顔をする蘭ちゃんだったが「浅井っていうプロデューサーなんだけど…」と言いにくそうに教えてくれた。
横文字の会社名。
なんだか見覚えのある名前…。
プロデューサー…。
「ど、どうしたの?!めっちゃ嫌な顔してるけど!!?」
ドヤ顔混じりのニヤケ顔から、嫌悪感丸出しの顔に変わっていたみたいだ。
職業柄、頂いた名刺の内容は一瞬みただけでも覚えてるタチでして…。
なんだ。私が持っている手札をきらなくてもどうにかなりそうだ。
「とりあえず…蘭ちゃん、席にお邪魔してもいいかな?」
頭の中でスイッチがカチリと切り替わる。
酔いもぶっ飛んでいるし、席に戻れば相棒もいる。
(なんだ、楽勝じゃん)
その前にトイレ!としまらない感じで用を足し、喫煙スペースで律儀に待っていてくれた蘭ちゃんに続き個室が並ぶホールへと戻った。
トイレから戻りキミにちょっとついてこい。と事情も言わず呼び付ける。
驚いた事に私達がいた個室と蘭ちゃん達がいた個室が1個席を挟んだ隣だった。
複雑そうな表情の蘭ちゃんを見て何かを察したのかキミは静かにしている。
「あの…戻りました…」
これから何が起こるのかわかっていない蘭ちゃんは少し怯えているのか、ゆっくりと入っていく。
その背中を押し退けるように私とキミが個室の中に押し入った。
「浅井さーん!こんな所で会うなんて偶然ー!!!」
なよなよの鼻にかかった可愛い可愛い声。
個室の中には、目玉が落ちちゃうんじゃないかってくらい目を見開いてるあかりちゃんに、あかりちゃんの横に座り全力で料理についての蘊蓄を語っていたのだろう奴がいた。
奴とは、昼間フェス会場で私をナンパしてきた残念なイケメンだ。
空いていたイケメンの隣に座り、イケメンの手をそっと握り胸の位置に持っていく。
「昼間、声掛けて頂いたでしょう?ちゃんとお話ししたかったの」
ニッコリと首を傾げて笑いかける。
鼻にかかった甘い声。
私、可愛いでしょ?と自分に呪いをかけて。
「…嗚呼!あの時の君だね!こんな所で会うなんて!」
思いもよらない私の登場にイケメンは少し驚いていたが、胸に寄せられた手にニコニコと笑っている。
ちょろい。と思ったけど…
くそ、うちらが頼んでたコース料理より更に高級なコースなのが何だか悔しい…。
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