概要
体を蝕まれた彼女達は、妙な症状と向き合わざるを得なくなる。
それでも強く生き、時に激しく魂を燃やす。
死を待つだけの団地の中で。
数名のキャラクターからなる群像劇です。
仄暗い百合が好きな全ての方に捧げます。
おすすめレビュー
新着おすすめレビュー
- ★★★ Excellent!!!避けられなくとも暖かな死
事故により逃れられない死の運命を背負わされた人たちが、閉鎖されたコミュニティで生きていく...そんなお話です。
主要な人物たちの暗い過去、生き様、そして最期が卓越した文章力で描かれています。特に物語後半は前半の描写の積み重ねも相まってとんでもない爆発力を有しています。
自分は「登場人物にとっては幸せでも、読み手の解釈によってはバッドエンド」という意味でのメリーバッドエンドが少し苦手な人間ですが、「一緒に幸せに生き続けてくれ〜〜」という気持ちと同じくらい「よかったね...」という穏やかな気持ちが大きかったので、「ちょっと設定がつらいかも」という人も1度読んでみてはいかがでしょうか。
エピ…続きを読む - ★★★ Excellent!!!優しい温もりに満ちた死を、冷たく暖かい詩で描いた作品
人が死ぬのは、とても悲しいことだと思います。それは例えば、家族だったり、友達だったり。身近で、関わりが沢山ある親しい人が亡くなったときのショックは勿論、きっと多感な人だったなら、ニュースなんかで名前も声も知らない誰かが亡くなったのを知って心を痛めたりもするんだと思います。
このIn The Cityという小説は、そういった人の「死」そのものよりは、死によって引き起こされる心の動きを徹頭徹尾、丁寧に繊細に描き上げた作品だったように思います。
爆発事故の起きた炭鉱都市を舞台に、外界と隔てられた狭い世界の中、必死に生にしがみつく彼女たちの生活。ほんの些細なきっかけによって、それはゆっくりと崩れ…続きを読む - ★★★ Excellent!!!自分がこういう設定を好きだということを初めて知りました
激重設定から抽出される百合の成分はとんでもなく美味だということがわかりました(?)
伏線が処理されてない地雷みたいにいたるところにあって、歩くごとにそれらが悉く起爆していき、終には爆発によって開けられた穴ぼこのような虚無感が遺りましたね。この感覚に暫くは心中を貪られてました。
時代背景や炭山付近の団地というセットもリアリティがあって、読み始めた時は本当にこんな事件が実在したのかと検索したりしてました。無かったです。でもそれほどまでに如実に描かれているということに感嘆し、そしてその世界に囚われている彼女らにひたすら涙しました。 - ★★★ Excellent!!!緩やかに死にゆく一瞬の煌めき。この百合を見届ける覚悟はあるか。
閉鎖空間×謎のガスの蔓延×群像劇×殺伐百合。いや、よくもこんなものを思いついてくれたなと膝を叩きました。完敗です。
話の内容は作品のあらすじ通りです。閉ざされた街でガスに侵されながら生きていく人々の群像劇百合。
もうこの時点で好きなのですが、限られた物資を分け合う描写や当番制の設定など、理不尽な極限状況に陥っても日々の生活を保とうとする一種の逞しさ、あるいは諦めが光る。
さらにメインカプ3組の他にも挿話で別の住民の百合エピソードが描かれており、狭い空間の豊かな世界観に溺れます。やり口が天才すぎる。年商5億円。
退廃的な設定、終わりへ向かう世界を生き抜く人々、その中で芽生えてゆく女たちの関…続きを読む - ★★★ Excellent!!!生にしがみつく魂が共鳴する退廃世界の群像劇
舞台は事故によりコミュニティごと隔絶された炭鉱都市。仕事や家族や日常を奪われ、限られた自由と世界の中に囚われてしまった人々を描く群像劇です。
やや特殊な設定ではありますが、あくまでもそこに生きる人へ丁寧にスポットが当てられているため、物語へ没入することはそう難しくありません。世界観の提示も説明的な文章に頼ることなく、作中で起こる出来事や人々の口から点と点を結ぶように補完されていきます。
主題とは交わらない些細なエピソードや会話に交じる方言など、細やかかつ巧みに配置されたアクセントで登場人物たちの質感を補強していく手腕。そして忍び寄る病や狂気を感じながらも、それでも抗い生にしがみつこうとす…続きを読む