僕は僕を君へ届ける

作者 花田春菜

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★★★ Excellent!!!

 この物語はもちろんフィクションですが、技術が進んでいけばフィクションではなくなる可能性もあります。精神転送の概念は昔から存在しており、今後はAIなどの応用で実現を視野に入ってくるからです。そうなると、人間との機械の恋愛も普通になんてことも……等々と考えさせる作品でした。

★★★ Excellent!!!

死んだトムの記憶をコピーされた『僕』。
カスミとの暮らしの中で、トムとぴったり重なっていたはずの『僕』の存在が次第に揺らいでいき、次第に『僕』=『僕』になっていく様が心に響きました。
カスミに銃口を向けられることすら『僕』にとっては幸せな結末だったのではないかと思えてしまいます。

★★ Very Good!!

 割れた茶碗を、手段がどうあれ継ぎ合わせたとして、それが完全に元通りといえるのか。
 見た目が同じなら、とりわけ事情を知らない人間からならそれでも良いだろう。しかし、割れた事を知る人間からすれば自分の記憶を偽るわけにはいかない。
 で、本作は茶碗どころの話ではない。茶碗でさえ例え復元しても単純には喜べないのに、まして人間においておや。それを我慢しろだの耐えろだのと並べたてるのは、どだい無理な注文だろう。
 だからといって、主人公の仲間達が間違っているとも思えない。むしろ最善を尽くしている。
 だからこそ、本作は残酷だ。だからこそ、本作は面白い。
 詳細本作。

★★★ Excellent!!!

宇宙で死んだ僕は仲間たちの力によって記憶を電子化し、銀色の球体の「僕」として地球に帰還する。それは帰りを待つ彼女のためだった。人間の彼女と機械の「僕」の愛の行く末は……。
淡々と綴られる「僕」の語りがお話をぐっと引き締めていると思います。自分を電子化するのになぜ人型ではなく球体だったのか、なぜそこまでして彼女のもとへ帰らねばならなかったのか。
全ての答えと結末をぜひその目でお確かめください!

★★★ Excellent!!!

二人が考えていたこと、そして考えていることに気づいた瞬間に彼が彼自身になるというロジックが面白かったです。
もし彼が人間だったら、同じようには考えなかったでしょう。
彼が彼であったからこそ全てを受け入れられることができた。
そう考えると胸にくるものがあります。
気になった方はせひ読んでみてください。

★★★ Excellent!!!

数値化された、即ち、0と1で構成された人格は、記憶は

果たして、『僕』だと定義できるのだろうか。

3500です。
たった3500文字。
その中で、人とは何か、意思とは、命とは何かをこれ程問われるとは思いませんでした。

その愛情は、『僕』のものか。彼のものか。

深く、心を打ちます。

★★★ Excellent!!!

宇宙から帰ってきたのは彼(パートナー)自身ではなく、彼の記憶と人格を全て引き継いだ銀色の球体だった。

だから彼は人間の身体を持たない。思いやりの言葉をかけてくれることはあっても、抱きしめてくれることはない。

これは「小説」と「読者」の関係に似ている。

小説はどこまでも甘く、優しく、言葉で私たちを慰め、寄り添ってくれる。
でも辛いとき、私たちの手を握ってくれたり、悲しいとき、背中をさすってくれることはない。

そんな切なさが詰まった、名作短編SFです。

★★★ Excellent!!!

宇宙で死んだ僕は、僕だった。
でも「僕」を作り出すことで「僕」は生まれたのか、それとも蘇ったのか。
この「僕」という存在が、自分自身の存在を問うシーンに惚れ込んでしまった。

物語とともになぜ僕が「僕」を作り出したのかを追いかけて欲しい。

淡々と語られる中に、感情がひしめいている。

★★★ Excellent!!!

極度に発達した科学は魔法と区別がつかないと言うように、限界まで本人に近づけられた機械の意思は果たして本人足り得るのだろうか、そういった心の有りどころとは、機械の持つ意思とは、人がどこまでその形を変えても「人」で有り続けられるのか、逆に身近な人がそうなってしまったとき、元の「人」として愛し続けることができるのか。SFだからこそのテーマで書き上げられた純愛にして悲恋だと思います。

★★★ Excellent!!!

主人公トムは宇宙で命を落とすが、人型ではなく銀色の球体に姿を変えて恋人カスミの元に戻る。それでもカスミは喜ぶが……という導入から始まる物語。

二人の関係が徐々に変化していく過程が悲しくも美しく、心打つものがある。
愛情、というものをこんなに短時間で考えさせられる作品は珍しいと思います。

★★★ Excellent!!!

宇宙で命を落としたトムは、愛するカスミの元へ金属の球体の姿で帰ってきた。

何故人型ではなく、そんな姿に?

それは死んだトム本人が希望した事だった……。

物語の最後に、きっとあなたもトム本人の深い愛情に気付くでしょう。
胸が締め付けられる、とても印象的な物語です。読後何日もずっと尾を引きます。

切なくも美しい物語……。
どうぞページをめくってみてください。
あなたもきっと心を打たれるはず。

★★★ Excellent!!!

圧倒的な読了後の満足感とそこから追って来るように感じる切なさ。
ラストのあのシーンが、あの言葉が頭から離れない。

本作は、最初から最後まで1つのテーマを貫いているので、下手なことを言うとすぐにネタバレになってしまう。
簡単にあらすじを口に出したくない。この話を簡潔にまとめたくない。
読めばわかる、そう言いたい。本当にそう。じっくり、一つ一つの言葉を拾うようにして読めば、皆そう思う。

丁寧に細部まで書き込んだ、“僕”の心情描写、葛藤。日常会話でわかる、カスミの心情、葛藤。
それらを全て拾って、一つの決断に辿りつく。その決断が非常に見えても、美しい。溢れんばかりの“愛”とその“愛”に応える行動。
ある意味で、ハッピーエンド。絶対的なハッピーエンド。

短編だからこそ成り立った作品だと思う。

★★★ Excellent!!!

僕は確かに僕だったし、それは君を繋ぎとめるには十分な存在だった。
けれどもやはり僕は僕でしかなく、君は僕を僕として見るようになる。

心は確かにそこに在った。
でもそれは、僕のものであった。

僕の僕としての幸福な『人生』。
なんのために生きてなんのために死ぬのかを知り、緩慢で無機質に過ぎゆく時計の針が僕を置いていくまでの間の記憶。

あなたの瞳にはどう映るだろうか。

★★★ Excellent!!!

主人公が死を迎え、その記憶と人格が人ならざる物にコピーされる。――と来れば対象は人型のアンドロイドか何かであってほしい所、彼は金属の球体に移植されることになる。『僕』自身は平然としていますが、読者としては、パートナーであるカスミの煩悶はいかばかりかと思わずにはいられません。
『自分は自分』という自我の目覚めが促す、なぜ金属球の姿として作られたかという自問への回答、そして迎える結末がとても切ない。最後の瞬間、トムではない彼の思いはカスミに届いたのかな、としみじみ考えてしまいました。
深い内容を扱った良作短編をありがとうございました。