第26話 古書店の主人
いらっしゃい。
おや、お久しぶりじゃないか。
かまわないさ、顔を見せてくれるだけで嬉しいよ。ちょうどお湯が沸いた。紅茶でも淹れよう。
ん?ああ、大丈夫だよ。此処まで買いにきてくれるのは、常連さんばっかりだからね。来たら、その人にも淹れればいい。もし新しいお客さんだったら、尚更ね。
あは、本屋かカフェか分からないって?そうだねぇ、妻が店主をやっていた頃から、茶飲み話ができるように、レジ周りには本を置かないようにしてあるからねぇ。ちょっと変わっているかもね。
話したことなかったっけ。僕はいわゆる入り婿でね。ここは元々妻の実家が営んでいたんだ。昔は新刊とか漫画雑誌なんかも置いてたみたいだけど、だいぶ前に大手の本屋さんが駅前にできたからね。いつ頃からか、古本専門になったんだ。
いまは買い取りとか、遺品の整理のお手伝いとかが多いかなぁ。下町だからね。ご近所を回って、本を回収して。結構力仕事なんだよ、本屋は。
そうそう。その写真に映ってるのが妻だよ。美人だろう。
えっ?
違う違う、確かにそう聞こえる話し方しちゃったけど、育休ってやつだよ。うちの子は3歳になるんだけど、まだまだ手が離せないから。君が始めて来た頃には、もう僕が店主だったかな?
いやいや、大丈夫。僕の言い方もまずかった。
え、見る?見たい?うちの子の写真。かーわいいんだ、これが。
ほら、これは産まれたばっかりの頃。え?全部おんなじ写真だって?動いてるからポーズが違うだろう?ほら、この手!ちっちゃくて、赤くて、でも僕らの手と同じ形をしてるんだ。奇跡だろう?僕は感動したよ。妻にあきれられるくらい泣いたね。
もっと大きくなった頃の写真?小さい頃の写真、もっとあるよ?いいの?
じゃあこれ。すごい顔で泣いてるでしょ?ぶちゃいくでかわいい!
わからないかなー、このかわいさ。2歳になってイヤイヤ期が始まってね。ありとあらゆることに「いや!」って言うんだよ。お洋服着ようね、って言ったら「いや!」じゃあお外に行かないのかな?って言ったら「やだよぅー」って大泣きするの。かわいいよねー。その当時はグロッキーだったけど、いま思い出すと笑っちゃう。
それからこれはね・・・・・・
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