第34話 スクールカウンセラー
ああ、こんにちは。どうぞー。予約も入ってないし、ゆっくりして行って。
ごはん、もう食べた?ああ、持って来たのね。食べるのは大事だからね。ゆっくり食べて。目の前座っても大丈夫?じゃ、お茶持って来ようっと。
そうそう、ここ色々あるから、面白いでしょ。ビーズとかもあるよ。手芸箱に入ってるから、後で見てごらん。
こないだはあれか、絵を描いてたね。スケッチブック、すごいでしょ。描いたの残していく子が結構いるからね、他の人の絵を見るのも楽しいよね。
あ、これ?やったことなかったっけ?箱庭療法って言って、内側を青く塗った箱に砂が入ってるの。砂を深く掘って水を表現したり、好きなミニチュアを置いてみたり、色々。砂をいじるだけでも結構落ち着くよ。
もう食べ終わったの?素早いね。
お、砂箱やってみる?ここにミニチュアがいっぱいあるから、好きなの使って。
あはは、そうそう。セット売りのもあるんだけど、先生たちが集めた食玩とかも混じってるから。あ、その鮎の塩焼きは密かなお気に入り。
そうだよ。好きなように。それだけがルール。
砂、気持ちいいでしょ。さらさらしてて。
お、魚をぐさっと突き刺しちゃう?いいね。その発想はなかった。
ふふ、なんかすっきりした顔してるね。
え?分析?・・・・・・うーん、まあ、色々言われてるけどねえ。何回かやってみないことには、はっきりとは。その人の癖とかもあるからね。あと、これに限らず作ること自体に意味があるんだよ。物作りって、自浄作用があるから。あと、出来た作品を見ることで自己分析ができたり。
華道か。うん、納得がいく作品がすぱっと出来るときと、出来ないときで不調が分かるっていうのもそうだよね。今回は、自分でやってみて何か心に浮かんできた事とかあった?
・・・・・・ああ、あの事件のことか。
そうか、これは「哀惜」なんだね。ああ、確かにお墓のようでもある。
ふうん、その下の水に向かっているのか。上から見ると「終わり」のようだけど、彼等にとっては「旅立ち」か・・・・・・。
ふむ、「再会」ね。ああ、この埋め具合が浅いやつは生きている側なの?
なるほどね。同じ場所に向かっているから、再会の希望があるのか。
悲しいだけじゃなくて、優しい作品だね。
そっか。役に立ったなら良かった。カウンセラーは、鍵を無くしちゃった人の部屋に、一緒に入る人だからね。でも、鍵を直接渡してあげるわけにはいかない。カウンセラーにできるのは、鍵を一緒に探すことだけ。
うん、いつでもおいで。先生たちでよければ、また一緒に鍵を探すよ。
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