それは、ぎゅっと抱きしめたくなる絵本のような

存在しない本作の絵本を、その美しく装丁された表紙を両手に抱きしめながら、愛おしさ全開でレビューを書いています。

さて、短編で感情体験を作り出す際に最も効果的な手法の一つとして、いわゆる"どんでん返し"があると思います。本作にも「おおっ!」と見える世界が変わるシーンがいくつかありますが、個人的にはこの作品の魅力の要はそこではない、と感じました。
この作品の魅力は、いわば"全身"なんだと思います。一文単位の手ざわり、掛け合い、書くことと書かないこと、キャラクター相互の想い合い……それら全てが縦糸横糸になって、丁寧に編み込まれて、そうして出来上がった織物があなたの心をそっと芯から温めます。

こんな長文書いておいて何言ってんだと思われるかもしれませんが、本当は魅力を紐解こうとするのもおこがましい傑作です。心があったかい気持ちになる。それだけで本当はいいのです。
感情体験は保証します。ぜひご一読を。

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