閉塞の美学、ここにあり

一万字以内、という当企画の制限は物書きにとって中々扱い辛いものがあります。
にも拘らず、この作品の筆者はなんと字数制限に加えて、あえて自ら「舞台」をメルの部屋の中のみに、「形式」をメルと博士の問答という形に限定しています。そして、それによって閉じられた世界にしか現れることのない美しさを、きらめきを掬い上げ、作品世界に愛おしさを閉じ込めることに成功しています。
もう、ひたすらに美しいのです。とんでもないのです。

最後に、この企画で忘れてはいけないのが「メル・アイヴィー」というキャラクターが生きているか否か。その点、本作を通じて「メル」のことを"私"はちゃんと「好き」になれたと思います。
ぜひ、一読をお勧めします。

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