矛盾したことを書いていると思いますが、そう書いてしまう程、この作品には人間の本質のようなものが、ありのままに描かれていたと思います。
メルが魔女に捕らえられて歌声を奪われたのも、メルが魔女の館で出逢って仲良くなった少女に、
「あなたと友達にならなければよかった」なんて言葉を言ってしまったのも、
全てはワガママ・力不足・後悔・現実逃避などの「人間の弱さ」によるものでした。
しかし、だからと言ってメルは、
「こんな辛い想いをするくらいなら、もう誰とも友達にならない」ではなく、
「あなたと友達になれてよかった」と言い、
メルは少女と交わした約束を果たし、少女と別れ、次に彼女の助けを必要とする人の所へ向かいました。
再び「あなたと友達にならなければよかった」と言ってしまうくらい辛い想いをするかもしれないのに、
何故そんなことができるのか、
その理由は「人間が強いから」に他ならないと思いました。
いや、少し違うかもしれません。
人間は弱いから、誰かの助けを必要としていて、
そのために、傷つきながらも出逢いと別れを繰り返し、
助け合い・出逢った人との想いを積み重ねることにより強くなる。
まさに人生の縮図であり、メルの首につけている黒いチョーカーはそれを象徴するものだと思いました。
このレビューを読んで、この作品でどんなドラマがあったか想像がつきますか?
もし想像がつかないなら、ぜひこの作品を手にとり、自分の目で確かめてみてください!
存在しない本作の絵本を、その美しく装丁された表紙を両手に抱きしめながら、愛おしさ全開でレビューを書いています。
さて、短編で感情体験を作り出す際に最も効果的な手法の一つとして、いわゆる"どんでん返し"があると思います。本作にも「おおっ!」と見える世界が変わるシーンがいくつかありますが、個人的にはこの作品の魅力の要はそこではない、と感じました。
この作品の魅力は、いわば"全身"なんだと思います。一文単位の手ざわり、掛け合い、書くことと書かないこと、キャラクター相互の想い合い……それら全てが縦糸横糸になって、丁寧に編み込まれて、そうして出来上がった織物があなたの心をそっと芯から温めます。
こんな長文書いておいて何言ってんだと思われるかもしれませんが、本当は魅力を紐解こうとするのもおこがましい傑作です。心があったかい気持ちになる。それだけで本当はいいのです。
感情体験は保証します。ぜひご一読を。
(ネタバレしないように細心の注意を払います)
魔女と少女とメルの話、です。
もう××の??が発覚したときは涙腺が緩むこと間違いなしです! ☆☆の愛って尊いんですよ。序盤の尊い流れから、尊い返しがあってこその尊いラスト!
もう、私だって〇〇の△△がわかるとき、物語は180度反転する……とか、格好つけたレビュー書きたいんですよ?
しかし、やはりこの物語の素晴らしさをぜひあなたに味わって欲しい。そう思い、伏字でレビューをお送りしました。
このお話の素晴らしさは、まだ未読なあなたにこそ響くと思います。少しでも気になったあなた、ぜひぜひ^ ^
面白いのでおススメです。
メル・アイヴィー
この謎めいた人物に如何なる《物語》を吹きこむのか。どのような《歌》を歌わせるのか。
これは、かんたんなお題のようで、実は非常に難しいことです。
《物語》を吹きこむことは《いのち》を宿すことに他ならず、彼女の《歌》に如何なる《願い》を込めるのかを書き綴ることは《歌》にちからを授けることだと思うからです。
この物語には、しっかりとそれらが組み込まれています。
御伽噺のような誰もが優しいせかいのなかで、それでも産まれる悲しみのこと。胸がぎゅっと締めつけられるような痛みがあって、それでも悲しみを乗り越えて未来に踏みだすことで、確かに救われるものがある。
ひとつの短編小説としての完成度は勿論のこと、この人物に命を宿すのに必要なものがすべてそろっています。
是非とも一読を。
小説に音はないけれど、きっと最後には優しい《歌》が、あなたの胸に響くはずです。