概要
「村の外の者に、決してカイリの歌を聴かれてはいけない」
ある日、事故で死んだ主人公カイリは、記憶を持ったまま異世界へと転生した。
だが、記憶を持っていようとも、期待していた様なチート能力など微塵もなく。
それどころか足手まといでさえあるカイリは、しかし故郷の村で満ち足りた生活を送っていた。
窒息死しそうなほどに愛してくれる両親。
十近く離れた年下の友人を剣の師匠と仰ぐ日常。
歳の離れた娘に求婚される日課。
厳しくも優しく見守ってくれる村の人達とのふれあい。
だが十六歳の成人を迎える間際、カイリはある疑問を持つ様になる。
「村の外の者に、決してカイリの歌を聴かれてはいけない」
幼い頃からのこの決まり。
それが紐解かれる時、世界の
おすすめレビュー
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- ★★★ Excellent!!!その前世は無意味でなく、この転生は易くない。
人生ハードモード、という言葉ばかり使ってしまったのですが、容易くない二度目の人生がドラマティックであり残酷であり、だからこそ自分の足で進んでいく物語の構図に引き込まれていきます。
異世界転生(あるいは転移)モノのなかには、前世の職業や記憶を生かし、転生先でスローライフを送ったり無双したりするものが多いかと思います。それもひとつのエンターテイメントだとは思うのですが、今作の「前世が転生先でも重要な意味をもつ」ところが私はとても好きです。新しい人生を歩むだけだと、どうしても前世の自分を踏み台のようにしてしまいがちです。でも主人公のカイリには前世の記憶があるだけではなくて、前世で使っていた日…続きを読む - ★★★ Excellent!!!カイリの歌が、いつまでも「村の人たち」に届きますように……。
生きていた頃、カイリは高校模試の判定結果をたまに会える父親に機械の如く渡すのが習慣の日々だった。
判定は当然の「A」。
最高峰の大学をただ目指して、机の上で勉強する日々。
父が、医者。
母が、裁判官。
当然カイリもその道に進むのだと思っていたのだが……。
突然の事故で死んでしまい、記憶を持ったまま異世界へと転生したんです。
只の「記憶持ち」。
現実世界でも前世の記憶を持ったものがいると聞いたことがありますが、いずれにせよよくある「チート能力」や「ハーレム」なんてご都合主義なものはなく。
ありふれた日常を、温かく優しさで目が霞むような生活にカイリは満足していたんです。
一歩、一歩、年…続きを読む - ★★★ Excellent!!!想像を遥かに超える、胸が締め付けられるような「童謡ファンタジー」
転生先の異世界は、「歌」が特別な意味を持つ世界だった――。
主人公が異世界に転生します。
しかし、特殊能力を得たわけでもなく、前世の知識を生かして大活躍するわけでもありません。
主人公カイリは「前世の記憶を持ったまま生まれてきてしまった」というだけの、普通の少年です。
むしろ、前世の死の恐怖を覚えているがために、人を傷つけることを極度に恐れ、日常的に武器が扱われるようなこの世界では「役立たず」と言えなくもない、そんな立場です。
けれども、カイリの両親は暑苦しいほどの愛情たっぷりに彼を育ててくれ、村の人々も皆、優しい。カイリは、平和な毎日を過ごします。
――時々、「隠されてい…続きを読む