カイリの歌が、いつまでも「村の人たち」に届きますように……。

生きていた頃、カイリは高校模試の判定結果をたまに会える父親に機械の如く渡すのが習慣の日々だった。

判定は当然の「A」。
最高峰の大学をただ目指して、机の上で勉強する日々。

父が、医者。
母が、裁判官。

当然カイリもその道に進むのだと思っていたのだが……。
突然の事故で死んでしまい、記憶を持ったまま異世界へと転生したんです。

只の「記憶持ち」。
現実世界でも前世の記憶を持ったものがいると聞いたことがありますが、いずれにせよよくある「チート能力」や「ハーレム」なんてご都合主義なものはなく。
ありふれた日常を、温かく優しさで目が霞むような生活にカイリは満足していたんです。

一歩、一歩、年齢を重ね。
一歩、一歩、優しさに触れ。
一歩、一歩、彼は、カイリは……。

――――歌を「村の中だけ」で、歌うんです。


丁寧に、丁寧に……。
心の違和感と葛藤しながら、彼は歌うんです。

一話、一話。
私は胸が締め付けられる感覚がしました。
そして……。

「赤」が村を――――……。
――――「黒」が人を。

そして、彼は知る。

目の前には、優しい顔をした両親。
ライン。
ミーナ。
リック。

――村の者達が、静かに佇む。

彼は、カイリは一歩踏み出す。
そう、旅に出るんです。

この物語はそういう物語なんだと。
私は感じました……。

「感動」という言葉を軽々しく使うつもりはありませんが、画面越しで涙が溢れたのは作者様の想いが伝わってきたからでしょう。

第16.17話の文章。
凄いです……。
凄すぎました……。

歌を、想いを、カイリの幸せを。
心から願っています!

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