第23話 道の学校

……時は流れた。

僕の名はカガミ。僕は道の学校で、クズセイトと呼ばれていた。何故か僕は、クズと呼ばれたことが嬉しかったんだ。先生達は『真っ直ぐな道』に育ちなさいと教えてくれたから。カガミという名の道は、不器用でとにかくコーナーだらけだった。何故僕という道は、真っ直ぐに育たなかったのだろう? 道の学校を卒業すれば、『扉』を通り『人間』の心へと変わっていく。


僕の目の前にいるロボットはキョウジンだ。かつてグシンが乗っていたロボットだ。今のパイロットは、僕の同級生の『ジュウ』だ。叩かれて真っ直ぐになったパイロット。ジュウがこちらをにらむ。


「お前は叩かれても、曲がったままだ。道の学校のことは置いておく。ただ、扉を通るに値しない」


僕もジュウも、ビームを騙る。両方とも本来のパイロットではないから、探り合っている。僕は、相棒のロボット『サツイ』に問う、


「学校って何だろうね?」

「カメタなら、生活する場所。一般に集団殺戮を行う」


僕とサツイは何故か出会った。僕とジュウは、『間違って』人間の心になった者を排除するために、ここに来た。どうやら僕は、間違った道らしい。そういう判断が下った。僕は曲がりくねった回数だけ、学業の成績を落とした。


「僕は『優しさ』を数えていたんだ。それだけだったよ」


サツイは呆れていた。


「カガミが数えていたのは、『優しさ』ではなく、『きっかけ』だ。カメタは優しさのきっかけを嫌っていたからだ」


そうだったのか……。きっかけの一つが事故で、優しさの試される場所。ならば、優しさなんて要らないよね。


最初から真っ直ぐだった心なら、道ならば万が一の事故も起きやしないってさ。僕は、何故真っ直ぐな道が許せないのだろう。僕はサツイを操り、ただジュウと戦っていた。人間の心の中に住む道が集う。

信念を持ち、道達は戦うという。ここが、そう『扉を貫く絵』だ。新たに人間になった生命が、道だった頃の逆恨みしている記憶を抹殺する。


道だった頃を思い出す。空から道が落ちてきた。海からロボットが落ちてきた。ロボットは空だろうか? いや、パイロットが乗っている。そのロボットを操っているパイロットは言う、


「このロボットの名は『ドレミ』と言う。私は、空から君達を見て羨ましかった。何故なら、私は『退屈』だったからだよ」


僕は聞いたことがある。空には、真っ直ぐで成績トップの道があったってさ。確か、『ホムラ』っていう女子生徒だった。ホムラは校則に従って、見て見ぬふりをしている。ジュウがしびれを切らす。


「ホムラは戦うために来たのだろう?」

「戦う? 何故道の学校が嫌うことを私がする?」

と、ホムラは優等生らしく答える。


サツイは、ロングビームをホムラのロボット、ドレミへと放つ。ホムラもビームを構えて言う、


「真っ直ぐな道は、ただ日常を繰り返す。カガミもジュウも戦いで賑やかだ。地上の道は、人々との接触がある。誰も私など見ていなかったのだよ」


ホムラを誰も見ていなかった? そんなはずはない。僕はホムラを認識していたから。そうだ、思い出した。僕は真っ直ぐな道だった頃、ただ寂しかったことを。だから、道をねじ曲げたのだ。見て欲しかったのかも知れない。


「素晴らしい『殺意』だ」


と、ロボットのサツイは笑い出す。キラーというパイロットを思い出したらしい。


空の道は、何処まで続いても交わらない。ホムラは、海から空へと降りてきたのだ。ホムラは宣言する、


「私は真っ直ぐに戦うさ。自分の信念というより校則に従って戦う。それこそが真理だ」


それは、僕が彼女の視界に映った瞬間だったのだろう。


それが起こったのは、三人の戦いの途中だった。そこに侵入者が現れる。いや、僕達三人が侵入者だったらしいな。




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