第6話 最強VS破壊
遂に、校長とローズが接触する。ローズが言う。
「これは驚いた。まさかロボットにも乗らず、生身で来るとはな。レーダーにも映らない訳だ。戦うつもりはない、ということか……」
校長は答える。
「聞かせて貰おうか、三十年計画とは何かを」
ナナが横から口を出す。
「聞き方が直球過ぎるぞ。そんな重要なこと、教える訳がないだろう」
「ナナは下がっていろ。人間は好かないのだろう」
「私はいかなる時も、ローズ様を補佐する。それが私の役目だと信じている」
校長が言う。
「ナナさんか。なかなか良い娘ね」
ローズが答える。
「あなたにしてみれば、ナナは子供みたいなものか。しかし、もうすぐ三十歳だというのに、ナナは堅すぎるな」
ナナは不機嫌になりつつも、自分の仕事を全うしようとしている。
ローズが言う。
「校長とカメロウの激闘も、今では古い話になったな。カメットではなく校長の心が、カメロウを変えたのだろう。カメロウの強さは異常だったな。こちらの被害も凄まじかった。校長をやや上回るほどだった。残念なことに、昼コリにやられたか……」
校長が言う。
「全然残念そうじゃないわね。昼寝に懲りたウサギは、元気にしてる?」
「まあな。そろそろ本題に入ろうか。約三十年で戦争が終わる、と言ったらどうする?」
ナナが横から口を出す。
「ローズ様、いいのですか。そんなことお話になって……」
「そうね。どういう仕組みかしら?」
ナナは、校長が気に食わないようだ。いや、人間全てが。しかし、ローズへの愛が邪魔をする。ナナは言う。
「ローズ様はおばさんが好みか……」
ローズはそれを聞き流す。そして続ける。
「光エネルギー発生装置が破壊されれば、新たに作らねばなるまい。それの繰返しで、我々の技術は向上する。その技術で、恵みの光の邪魔にならぬようにするというものだ。それに、三十年くらいようするだろう」
校長が答える。
「それは素晴らしい。しかし、国が納得するとでも?」
ローズは言う。
「知識を詰め込んだ交渉マシンを製作中だ。犠牲になった者達には、すまないと思っている。私はうわべだけかもしれんな」
ナナは、校長をにらみ続けている。しかし、二人ともそれを全く気にしていない。ナナが言う。
「そんな重大な秘密をばらしても良かったのか?」
ローズが言う。
「この人は口が堅いさ」
校長が言う。
「私は信用されているのね。それにしても、それは上手くいくの?」
「絶対などはないな。こちらに話させたということは、こちらも情報を貰おうか。用意してあるんだろ?」
「さすがね。その計画も視野に入れておくべきね。しかし、カメットから扉を貫く絵とやらの暗号が出てきた。ゼウスとマリアが関係しているみたいよ」
「ゼウスとマリアだと。神話の中の人物か……。ここは笑うところなのか? しかし、あなたがこんな冗談を言うとは思えない。しかし、今は協力出来ない。確証も無ければ成功するとも限らない。他にも何かが働いている気がする。危険だ。そして、我々は戦争中だ」
校長が言う。
「そうね。確証はないわ。でも、そのための三十年計画でしょ。この件は、最も信用出来る人物に託したわ。その時になったら……」
ローズがさえぎる。
「もういい。私は私の仕事をする。しかし、あなたの力は必要だ、いろいろな意味でね。これ以上はスパイの疑惑が湧く。もう帰った方がいい」
校長が答える。
「そうね。国の長に怒られるのは、間違いないわ」
……そして、話はカメタ達のところへ戻る。カメタが言う。
「キラー、どう見る、次の任務を?」
「グシンが出現したのか。すごい数で戦っているようだな。グシンは強すぎる。しかし、何時か殺すためには、どれほどの者か見ておきたいな」
アイカが言う。
「キラーさんは、いつもそれですね」
要するに、グシンのスタミナ切れを狙って撤退させるのが目的の任務である。この任務には、凄い数の冒険者が参加している。
グシンは、こちらを占領しようとしているようだ。クワン族の中でもローズの次に強いらしい。わが国も、仕留めるのはあきらめているようだ。アイカが言う。
「兄さん、適当に戦ったら撤退しましょう。命あっての物種です」
僕は同意する。そうは言ったものの、一部とはいえ占領されたらまずいんじゃないか。どちらにせよ、僕達ぐらいでは、ほとんど戦力にならないだろう。経験と危険度を国は天秤にかけていると見ていいだろう。この任務を主役は、僕達ではない。
キラーが言う。
「さっさと行くぞ。青オニを殺した時の感触は、まだ覚えている。強いヤツほどやはり殺意を満たしてくれる」
僕達は目的地へと向かう。レーダーに複数の反応だ。クラスAまで混じっている。ザコレベルでは最高値か。今日はアイカに、無理やり肉を食わされた。とても不味かったが、力が体の奥底から湧いて出るように感じる。目の前をビームが飛んで来るが、それはクワン族に向かっている。クワン族は、それを回避出来ない。そして、撃破される。その先にあるものは、巨大ロボット。五十メートルはゆうにある。しかし、レーダーでもデータはない。何者だ? まさか、異星人なのか?
グシンは言う。
「破壊とは面白いものだ。ローズから頂いたキョウジンの性能は凄いな。何時かローズも破壊してやる」
まさか、ローズは新型ロボットを投入してきたかは新型ロボットを投入してきたのか。しかもグシンは、自分でバラシちゃったしな。しかも、味方まで攻撃してやがる。キラーとため張るぐらいいかれてやがる。新型ロボットか。何時になったら争いは無くなる。
キラーが急接近を使い、一気に距離を詰める。しかし、グシンがよける様子もない。キラーの攻撃でも、ほとんどダメージはない。グシンと新型ロボット・キョウジンが合わさり、驚異の耐久力を誇る訳か。味方が次々にやられていく、キラーが言う。
「これほどとはな。しかし、こいつを殺せたらと思うとウキウキしてくるぜ」
アイカが言う。
「キラーさんは、前線に出ないで下さい」
アイカはそう言うと、バリアを張る。アイカのバリアもかなり強力になったな。頼りにしているぞ。キラーよ、突っ込んで死ぬなよ。敵は、今までとは比べ物にならないぐらいの強さだな。キラーは、ロングビームでチマチマ攻撃する。しかし、クラスAのクワン族はかなり強いな。予想以上だ。どれだけ時が経った? グシンの体力は、全く尽きる気配がない。僕達は遠くからの見学に近いが、味方はかなりやられている。このままでは、この地は占領されてしまう。ギア四だな。キョウジンのビームをかわしまくってやる。キラーも同じ事を考えているようだ。アイカが言う。
「無茶しないで下さいよ、二人とも」
僕はキョウジンにビームをヒットさせ、こちらに注意を引く。このスピードについてこられるのか、そのでかい的で。僕はカメットのスピードを引き出そうとする。しかし、キョウジンのスピードは速く、グシンの照準能力もけた違いだ。このスピードで、かすっただと? 他のロボットにも注意しなければならない状態で、こんなことができるとは……。しかも、凄い威力だった。もし当たったら、非常にやばい。僕の心は、恐怖に支配されそうになる。この作戦は失敗だったな。ここは撤退だな。えっ。グシンが言う。
「カメットか。逃がしてたまるか。お前は破壊しがいがある。カメロウは死んだ。カメロウは、オレに恐怖を与えたまま消えた。次は、誰が乗っている?」
今までより強力なビームが拡散する。アイカが、守りの歌を歌っている。しかし、直撃だ。カメットほどの装甲がやられている。化け物か! キラーも大打撃を受けている。僕達は判断を間違えたようだ。もう一度あのビームを食らったら、死ぬかも知れない。何時まで耐えれば、グシンは撤退してくれるんだ! もう。逃げ場はないのか。味方も、あきらめた顔をしている。
その時、見慣れたロボットが現れる。キングだ。ロランさんが来てくれた。ロランさんが言う。
「カメタだったな。妹が世話になった。お前達は、今のうちに逃げろ。新型ロボットか、厄介だな。しかし、破壊を楽しむとは、オレはカチンときたぜ」
グシンが言う。
「きさまがロランか。破壊しがいがある」
グシンのビームが、途中で分裂する。ロランさんは、その全てをかわす。そして、ビームを叩き込む。凄まじい火力だ。しかし、キョウジンは全く気に止めない様子だ。僕達はその間に逃げ、遠くから見学している。これ以上は、僕達は足手まといになる。キラーが、かなり悔しがっている。しかし、ロランさんの登場で、味方の士気が上がっている。
キングのキングビームがキョウジンを貫く。しかし、グシンは気にした様子も見せず、味方を撃破していく。クワン族のロボットも混じっている。グシンは、破壊に捕らわれてしまっている。これも、制御説に当てはまるのか?
かなりの時間が経過した気がする。三十分くらいか。ロランさんの動きが鈍くなっている。ロランさんが言う。
「ちぃ。どちらが先にくたばるかだな」
凄い決戦だ。キョウジンの巨大ビームが、遂にキングを捉える。しかし、ロランさんは踏みとどまる。ロランさんの打たれ強さも凄まじい。今まで食らわなかった機動力も凄すぎる。
グシンが言う。
「凄い反動だ。最高の気分だ。もしロランを破壊出来れば、更なる快楽が得られそうだ。しかし、すぐに破壊するのも勿体ないか。んっ、腕が動かない!」
明らかに、グシンの精度が落ちていく。スタミナ切れに気づいていないのか? グシンは危険だ。ロランさん、早く止めを刺してくれ。ロランさんが言う。
「くっ、こちらも体力を使いきったか。っl、何としても仕留める。気力は体力を凌駕する」
グシンが言う。
「更なる破壊を……、ローズ」
ローズが言う。
「引け、グシン! お前の負けだよ」
通信を飛ばし合っているのか? グシンが言う。
「ローズ、きさまは俺の破壊を邪魔するのか」
ロランさんが言う。
「くっ、クラスAが援軍でかなりグルメのか。これ以上はやばいな。じゃあな、カメタ。妹に会ったらよろしく」
この戦いは、何時まで続くのだろう? 一つ終わっても、すぐ次がある。きりがないな。キラーが言う。
「くっ、まだオレは弱いのか。力がいる。力が上がる毎に、殺意も欲求も強くなる」
キラーも焦っているようだ。しかし、今回は相手が悪すぎた。ロランさんとほぼ互角に戦っていたぞ。僕達もさっさと撤退しよう。
ショートストーリー1 ギア七に辿り着くな
校長が言う。
「ギアの秘密に気がついてしまった。カメットのギアは、カメロウさんの戦闘データだったのね」
近くにいた先生が答える、
「校長先生、機嫌が悪そうですよ」
「学校はキミに任せた。私はパーツショップに行く。許せるものか、カメロウさんが重傷を負い最後に訪れたのは、私ではなく店長のところだったなんて……」
校長は怒りをもって、夫の元へ行く。カメットソードが何処にあるのかさえ、校長は解ってしまった。校長は叫ぶ、
「どういうことなんだ、こらー!」
店長は答える、
「何だ? とにかく落ち着け」
店長は校長からいきさつを聞く。
「そういうことだったのか。カメロウ君は、キミとカメタに知られたくなかった。なんと、カメットソードは、『扉を貫く絵』に突き刺してあるらしいぞ」
「つまり、カメロウさんは『貫く絵』に辿り着いたってこと?」
「ああ、キミが感づいた『七段目のギア』に、カメットソードは封印されているんだ」
カメロウは、カメットソード以上の刀を、パーツショップ店長に注文していたのだ。
『カメロウ君よ、カメットソードは最強の剣だ。私にそれを超えるものなど作れない』
『カメタに俺のカメットソード以上のものを渡してくれるのは、店長しかいないと俺は信じている』
『解った。キミの最後の願いが叶うかは、カメタの想像力次第だ』
店長とカメロウの最後の会話である。
それこそが『変幻』。校長は言う。
「つまり、カメタがギアに頼り過ぎ、カメロウさんの力で戦い続け、『ギアセブン』に気がつけば、そこには『カメットソード』がある」
「そうだ。そうなれば、カメロウ君の願いはカメタに届かなかったことになる」
「私は『二人』を信じる。カメタは『変幻』を『カメットソード』以上にしてくれるって」
パーツショップ対カメロウのチューンアップの行方は、何処へいく?
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