第7話 殺してしまえ

あれから五日程度が経過した。母さんは、クワン族の本拠地から無事に帰還したらしい。国の長に、かなり絞られたようだ。しかし、母さんはローズとの接触の理由を明かさないらしい。かつて、かなりの戦果をあげた母さんでも、こればかりは簡単には許されないだろう。しかし、校長のいないロボット学校はまずい、ということで、とりあえず解放されたようだ。しかし、母さんがそこまでしてローズと会う理由は何だろう?

僕は、野菜と野菜ジュースはかなり合うと思うな。因みに今食事中である。キラーは、また高級寿司を食っている。金持ちだな。アイカは肉ばっか食っているが太らないな。かなりカロリーを消費しているからだろうか? たまには野菜もいいぞ。

アイカが言う。

「兄さん、あれは何でしょうか?」

「アイカは野菜ん食ってるか?」

キラーが言う。

「ふん、ベジタリアンが……。あれは扉なのか。ということは、あれはガードか」

扉? ガードだと。そんな訳があるか。僕は言う。

「神話なんか信じているのか、キラー。ってマジですか。手の込んだいたずらだよな。そんなものがあるわけがない」

アイカが言う。

「兄さん、目を覚まして下さい」

何だ、この感覚は? 任務の途中だというのに……。扉を守るガードか。完全に絵本の世界だよ。キラーが言う。

「カメタ、どうする? 触れてはいけない気がするが、入らないといけないような感覚に教われている」

「僕もだ。吸い込まれそうだ」

アイカが言う。

「何なの? この感覚は何なの?」

キラーが言う。

「とりあえず、ガードを倒すか。こちらに気づいている。これは殺意なのか?」

アイカが言う。

「そうするしかないようですね」

僕達はガードと向き合う。何故、こんなところに扉があるんだ! ゼウスとマリアの伝説は本当なのか。『この世界には無数の扉がある』とほざいた二人か。その一つってことなのか。

ガードは白色で、大きさは四十メートルはありそうだ。きっと動きは鈍いな。僕はガードに近づき、ビームを乱射する。ほとんど全てはヒットしたが、果たして効いているのか? 今度は、ガードがパンチを繰り出す。遅すぎる! 僕は余裕をもってかわした。何っ? もう次が来ている。カメットは吹っ飛ばされる。パワーはあるな、気をつけないと。

キラーも接近する。そして、ショートビームを繰り返す。アイカは力の歌を歌いながら、クローを繰り出す。僕は、変幻を四十メートルまで巨大化させる。相手の動きは遅い。ヒットするはずだ。ギアも入れ換えるんだ。しかし、でかくし過ぎたか……。重過ぎる。キラーが言う。

「バカが! パンチが来ているぞ。因みに、蹴りの準備も出来ているようだ」

キラーは、こんな時でも冷静だな。アイカが言う。

「無理をしないで下さい」

僕はかまわず突進する。ガードは痛みを感じているようだ。効いたってことだろうな。しかし、これはしんどい。適度なミドルソードでいいだろう。僕は、この変幻にかなり助けられているな。しかし、この扉へ吸い込まれそうな感覚は何だ? ガードがいるんだ。ガードは守りたい訳ではなく、僕らを試しているように感じる。キラーが止めを刺さなければいいんだが……。しかし、キラーが接近戦主体で戦うのは珍しいな。サツイは凄い機動力だしな。

ガードは遂に倒れた。眠っているのか? キラーも殺意をむき出しにはしないようだ。僕達は何かに導かれるように、扉を開けて中に入る。研究所のようなところだ。アイカが言う。

「兄さん、何があるか解らない。気をつけて下さい」

「ああ」

キラーも、その辺を慎重に見て回っている。

これは何だ? 『作戦ナンバー百十二、突撃作戦発動』か。んっ、これは何だ? キラーも驚いている。何故こんな所に、キラーとサツイに似た者の写真があるんだ? アイカが言う。

「似てますね」

「何だと」

キラーが、いやみんなが驚いている。キラーが言う。

「くくくっ、。こんなバカなことがあってたまるか」

そう言いたくなるのは解る。しかし、どうなっているんだ? 『作戦ナンバー百三十六、三十年計画』だと! 何故、これが予言されているんだ? ローズが発動するものじゃあないのか? いや、『後にローズが発動する』と書かれている。そして、『発動に必要なもの、キラー、実験体、サツイ』だと! 『実験体キラーはそれ以外には不要な存在』だと! そう言えば、キラーは捨て子だったらしいな。まさか、これは本当なのか。『キラーの殺意のリミッター解除? 制御をはずす』だと? 何が起きているんだ。入ってはいけなかったのか。

キラーが言う。

「俺は三十年計画のためだけの存在だと? ふざけるなよ。殺意が自分へと向けられていく。サツイに殺意が向かう。俺は……」

キラー、これが事実でも僕は告げなくてはならない。僕は言う。

「解っている」

キラーが叫ぶ。

「解っている、だとカメター!」

僕は言う。

「殺してしまえ。人間もクワン族も異星人も殺してしまえ、キラー」

「何だと?」

僕は言う。

「でも、自分を殺すなよ、キラー。僕はこの戦争が終わったら、優しさで包まれた世界にしたいな。キラーには、優しさなど誰も求めてはいない。キラーは、どんな世界がいい?」

「カメタ……。俺が望むのは殺意に満ちた世界……」

「ライバルだな、僕達は」

「そうだ、譲りはしない」

アイカが話に割って入る。

「私は入り込む余地が、無さそうですね。ラブラブです」

アイカは何てこと言うんだ。そんな訳がないだろ。

キラーが言う。

「ライバルだ。そのためには、一時的に協力してやる。ありがたく思え、アイカもな」

キラー。、今までで一番優しい声だった気がする。僕達がここへ来たのは、何者かが意図したことなのだろうか? とにかく、僕達は先へと進む。アイカが言う。

「はい、はい。行きますよ。それとも、まだ見ていきます?」

僕達は首を振った。

次の任務は、鉱山の警備だったな。あそこは、クワン族がよく来るからな。資源を持っていかれる訳にはいかない。キョウジンみたいな新兵器が生み出されたら困るしな。アイカは、何故かご機嫌なようだ。


パーツショップ店長の日記1 成長編

私はカメタの義父で、パーツショップ店長だ。ここまでの物語を日記に記そう。

キラー君のサツイは、自らを守る心だった。そんなキラー君をアイカは良しとしなかったね。そして、カメタの心はもろく、信念も弱かった。八方美人だったと言えるだろう。その中にキラー君がいたことが、カメタを成長させる。カメタは仲間達に恵まれていたから今がある。

キラー君は、沸き上がるサツイを信じられなくなったよね。カメタの信頼を得たキラー君は、サツイを失う。キラー君に新しく出来た心は、厳しい判断力。キラー君は、サツイという言葉を照れ隠しに使うようになった。アイカは、そんなキラー君を信頼していく。カメタは甘さと優しさの区別を、少し覚えたんだ。成長した三人は、次のステージへと向かう。


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