第14話 ナイト

グシンが言う。

「これでローズに勝てるんだな。ローズを破壊出来るんだな」

シロクマは言う。

「リミッターなら外した。お前次第だ」

そう言って、シロクマは去っていく。まさか、グシンがコマペン側についたのか? これが、平和の意思と戦うということなのか。グシンは言う。

「破壊だ。人間も、クワン族も、そしてコマペンも全て破壊してやる。ローズだ、ヤツを破壊する」

やばいぞ。非常にやばいぞ。グシンはもはや見境もなく、全てを破壊する。制止出来る者はどこにも存在しない。どうしたらいいんだ。

キラーが言う。

「ヤツを今度こそ仕留める!」

アイカが言う。

「くっ」

僕は言う。

「やめろー、キラー。連戦だぞ。ヤツの方が力が上だぞ」

キラーが言う。

「だからどうした。俺の殺意は最高に燃えている」

そんなもの、燃やすなよ。勝てる相手じゃないよ。ヒルコリの犠牲は何だったんだろうな。ナナが言う。

「ダメです、ローズ様」

ローズが言う。

「私が出よう、ヤツの望んだ破壊だ」

ナナが言う。

「指揮はどうするんですか? ローズ様がいないと……」

「ナナ、自分を信じろ。後はお前に任せる。ナナは私以上だよ」

「それでも……」

「私は、クワン族の誇りにかけてグシンを止める」

そしてローズが出てくる。ナナが言う。

「無事に帰ってきてくれますよね、ねえローズ様」

ナイトだ。ローズがナイトを操る。旧式だが、凄まじい性能を誇るロボットだ。ローズが改良したのだろう。僕は言う。

「ここは、潰しあってもらおう」

アイカが相づちをうつ。キラーが叫ぶ。

「ふざけるな、カメタ! 見損なったぞ。まあいい」

ローズが何か呟いている。

「マキさん、私は守ることが出来ただろうか」

味方が言う。

「遂にローズが出てきたぞ」

「潰しあってもらおう。状況がよくわからんがな」

僕も状況が解らない。ローズがやられても、戦争は終わらないのだろうか? クワン族は、ほぼ崩壊するだろう。それほどローズは大きな存在らしい。グシンが言う。

「破壊だ。全てを破壊する! ナイト、遂に現れたか。本気で破壊する」

ローズが言う。

「文句はないな、グシン」

グシンは答える。

「きさまを破壊出来れば、凄まじい快楽が得られるのだろうな」

「下らんな。私がきさまを破壊してやろう」

ローズは剣を振りかざす。ビームをまとって、キョウジンに立ち向かう。何だと? キョウジンの性能が上がってやがる。さらに、グシンはドーピングを施されているようだ。どうする、ローズ? 一撃がグシンに決まる。グシンは言う。

「痛くもかゆくもないぞ。その程度か、ローズ。フハハハ」

グシンはビームを放つ。凄い数のビームだ。しかし、ナイトを捉えることは出来ない。ローズは、ビームを無駄なく的確に撃ちまくる。ローズとナイトは化け物だ。どちらが勝つんだ? 今のところ、ローズが押しているように見える。ローズは距離をとる。そして、ロングビームを放つ。凄まじい威力だったはずだ。しかし、それはキョウジンに大したダメージは与えられない。ローズは言う。

「くっ、やるなグシン。マキさん、私はナイトだ」

マキって誰なんだ? うーん、それほど有名ではないが、確かそんな名のクワン族がいたことを聞いた気がする。ローズは言う。

「ナナ、お前には感謝しているよ。いや、これからも頑張ってもらわないとな」

ローズが噛み締めるように返す。ローズは、ナナのことが大切なんだろうな。何故、人間とクワン族は争わなくてはならないんだ。ローズは一発も被弾していない。しかし、キョウジンの一撃は凄まじい。油断すれば、ローズをもってしてもきついだろう。ローズもバテてきたか。ローズは、ぎりぎりでグシンのビームをかわしている。ローズのキャノン砲が飛ぶ。しかし、キョウジンはコマペンに強化されているみたいだ。まだまだ落ちる気配はない。グシンの体力も強化されたようだ。どうするんだよ、ローズ。破壊なんかされて、どうすんだよ。

グシンは、遂に拡散ビームを放つ。ローズはそれをかわして言う。

「私はナイトだ。騎士だ。守る者だ。全てに決着を着ける」

ローズから、悲壮な決意を感じる。ローズは拡散ビームをさらにかわす。ナイトには、傷一つついてはいない。グシンが言う。

「くっ、何故当たらない。当たれば、感触が、カメロウに傷つけられたこの心が、全てを破壊する」

凄まじい戦いが繰り広げられている。ローズは惜しげもなく、キャノンを使う。それでも、キョウジンはタフすぎる。どうなってしまうんだ。この戦いにどんな意味があるというんだ。クワン族同士の戦いか。キラーが言う。

「俺も参加したいところだが、ローズに譲るか。殺しがいがありそうだがな」

アイカが言う。

「キラーさん、ここはおとなしくしていて下さいね」

「ふう。どうなるんだよ、これ」

僕には、ローズが押しているように見えるんだが、バテるのはどちらが早いだろう? ナナが言う。

「私もヴァルキリーで出ます。ローズ様、お許しを」

ローズが必死で止める。

「だめだ、ナナ。お前がいなれれば、みんなが守れない。お前はそれほどの位置にいると知れ、ナナ!」

「あうー。私が取り乱してどうする。ローズ様、無事でいて下さい」

「ああ」

ローズが優しく微笑んだ気がする。そして言う。

「ナイトよ。マキさん。私は間違ってはいないだろうか?」


……そして、時は三十五年以上前にさかのぼる。

ローズが言う。

「マキさん、人間ってどうしてあんなに横暴なんだろうね。滅びちゃえばいいんだ」

マキは答える。

「ローズ、心にもないことを言うな。うーん、どうしたら戦争が無くなるかな……」

ローズが言う。

「人間が全滅すればじゃない?」

「ふーん。やっぱり仲良く出来ないのかな」

「何言ってんだよ。人間が悪いんだぞ。僕達は、光エネルギーが無いと生きていけない」

「私のロボットだったの名前知ってるでしょ。ナイトだよ。全てを守るんだ。めぐみの光だって、光エネルギーだって守るんだ。ローズだって、守る使命があるのだよ」

「マキさんは、マキさんを守るんだよね。僕もマキさんを守りたい」

「この、クラスAに成ったからって、調子に乗るな。ローズはね、凄いものを守る気がするんだ。私もそうする」

「ちえ、マキさんを守れなくて、何が守れるというんだよ! 僕をなめるな」

「フフフッ、ローズは大物だよ。私はずっといるから。守るためにずっといるから。死んだら守れないもんね」

「そろそろ出撃だね」

「私が守るから……」

そして、戦いは続いていく。いくら経っても戦いは終わらない。ローズが言う。

「もう無理だよ。何時になったら人間は全滅するんだ?」

「しないよ。私が守るから。私には特製ロボット、ナイトがいるもーん」

「はあ、こんなんだからなあ」

ローズはため息をつく。

戦いは続く。季節を越えてまでも……。ローズが言う。

「行くぞ、殺してやる」

ローズは敵を撃ちまくる。かなりの戦果を上げている。ローズが言う。

「どんなもんだい!」

マキが言う。

「油断するな」

「はーい」

マキが言う。

「きりがない。そろそろ退こうか」

「バカ言うな、マキさん。これからだよ、僕のショータイム!」

ローズは敵の中へ突っ込んだ。ローズは更に戦果を上げる。その時、人間のエース達のビームがローズを襲う。ローズが悲鳴をあげる。

「うわーっ、……。生きている? あんなの食らったら死んじゃうよね。僕はバカだ。そして、マキさんも」

ナイトは大破していた。ローズをかばって……。マキが言う。

「私は守ったんだ、凄いものを。ナイトの名の如く、なんてね……」

「うわーん。マキさん、死んだらダメだ。死んだら守れないんだぞ」

「そうだ……ね。替わりにローズが守って、全てを。私はそれだけ凄いもの守ったんだ、平和、戦争のない時代、きっと来るよ。ナイトはローズが使って」

「うわーっ」


……そして、現在に戻る。ローズが言う。

「今でもマキさんは、私を守ってくれる。私はどれほどのものを、守れただろうか」



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