第12話 名刀の意味

僕は、

「疲れたー」

と言う。アイカも言う。

「余計な仕事が入りましたね。休んでも怒られないでしょう」

キラーは言う。

「ふん、俺の殺意は休むなと告げている」

「キラー、占いでもやるのか?」

「付き合ってられん」

そう言いながら、キラーは眠ったようだ。僕達はしばらく休憩した。平和の意思だのカオスだのロックだの、もう訳が解らんな。

そして、再び拠点を目指す。やはり、強敵が待っているんだろうな。ムサシウサギあたりと、また戦うことになるのか。十分有り得る話だ。僕達は、ロボットを修理しながら進む。僕達は、もう敵地に踏み込んでいる。これで、この戦いの終わりに近づけばいいのだがな。どちらかが本当に滅びなければならないのだろうか? 三十年計画とは、それを回避するためのものなのだろうか? しかし、ローズは人体実験までやっているらしいからな。そんなこと、許せる訳がない。

アイカが言う。

「レーダーに反応です。二十機程度でしょうか。気をつけて下さい。Aクラスもいます」僕達は、Aクラスとも互角以上に渡り合えるぐらい、成長してきたんだな。しかも、敵はこちらをマークしている。クラスCに苦戦していた頃を思い出す。学生の頃は、敵を殺すのも怖かった。それは今も同じだが、慣れてしまったというところもある。怖いものだな。

キラーが言う。

「行くぜ、ライバル! ぼーっとしてんじゃねえよ」

「殺意の火はどうした。まだ燃えてるんだろう?」

「見せてやるさ」

アイカがため息をつく。

「はあ、もう完全に二人の世界です。とにかく、油断禁物ですよ」

変幻とクラスAの兵士の剣がぶつかり合う。僕は押しきった。僕の勝ちのようだな。ショートソードに切り替えるぞ。僕は敵を切り刻む。さすがクラスA、これくらいでは落ちないのか。クワン族が言う。

「あいつらが人間のエース級か。くそー、勝ち目はないのか。それでも諦めんぞ」

僕達は、クワン族の間でもかなり有名になったようだな。エースクラスと見られているらしい。キラーのミドルビームで、クラスAを遂に一機撃破した。残りのクラスCは、ザコと化してしまったか。変幻を巨大化させるんだ。一気にかたをつけるぞ。

その時、レーダーに新しいロボットの反応が出る。アイカが言う。

「カメですね。しかし、一機で来るとは珍しいです。何かあるのでしょうか?」

キラーが言う。

「カメにはエースはいないのか? だとしたら、つまらん。俺の殺意は満たされない」

僕は言う。

「弱いのにこしたことはないぞ」

そう言えば、父さんはカメだったんだよな。そのカメは、凄いスピードでこちらに向かって来る。カメはふつう遅いのだが……。本当にカメのエースなのか? アイカが言う。

「来ます。準備しますよ」

何だ、あのカメは? 凄まじい長さの剣を持っている。六十メートル以上か。あんなもの使いこなせるのか? しかし、あのスピードから考えると、相当のやり手のはずだ。

そのカメが言う。

「オレはコジローガメだ。オレの刀を見ているのか? いいところに目を付けたな」

こいつもムサシウサギと同様、飛び道具を持っていないぞ。サムライの心とかほざくんじゃないだろうな。サシで勝負とか言わないよね。っていうか、カメが言葉をしゃべっているところは初めて見たぞ。何者だ、あのカメは? カメは制御によって心をオフにされているんじゃなかったのか。

コジローは、クワン族の兵士を一瞬で片付ける。あの長い剣を使いこなしてやがる。キラーが言う。

「そう来なくては、殺し甲斐がない」

アイカが言う。

「強いですね。私達で勝てるんでしょうか?」

僕は、とりあえずうなずいておいた。コジローが言う。

「カメタか。カメロウはそんな刀は持っていなかった。変幻自在という意味が込められた名刀か。もう一つ、成長を意味するようだな。オレは、コマペン様の部下の中でも、トップクラスの実力を持つ。カメロウに敗れたのも古い話だ」

父さんは、コマペン側に属していたのか。しかし、人間側についてクワン族に恐れられたと聞いていたのだが……。

キラーはロングビームを放つ。しかし、コジローは余裕を持って回避する。キラーは今度は連射する。それでもコジローはかわす。バランスが少し崩れたくらいか。ギア三ぐらいでどうだ? ギア五は温存しておこう。行けー! 突撃だ。えっ、剣が来ている。もう、体勢を立て直したのか。構わない、突っ込め! ……そんなバカな。コジローの刀の軌道が変わった。あんな長い刀で、どうやったんだろう。重い一撃がカメットを襲う。僕は切り刻まれる。一撃も重いが、この剣速か。ギア五は必須のようだな。行くぞ、ギア五だ!

コジローが言う。

「ツバメ返しだ。オレの最強の技だ。この刀は父が作ったものだ、オレのためにな。そんなもの誰も使いこなせない、と皆笑ったよ。でも、父はオレを信じてくれた。最高の名刀、物干し竿だ」

僕は、変幻の大きさと重さを切り替えながら戦う。キラーの掩護は嬉しい。アイカの歌もあるが、まだクリーンヒットがない。アイカがスローの曲を歌う。コジローが言う。

「何だ? スピードが落ちる」

コジローガメのツバメ返しを押しのけ、ようやくクリーンヒットが決まった。これでどうだ、コジロー。コジローは言う。

「さすがだな。いいチームワークだ。そして、素晴らしい名刀だ。名刀も使いこなす者がいてこそ意味を持つ。変幻も、使う者をわが子のように思っているのだろうな、変幻を作ったヤツが。どんどん成長して欲しいという願いが伝わってくる。相当な名刀だ」

義理の父さんは、僕のことをそこまで思って、変幻を作ってくれたのだろうか? 大事にするよ。そして、父さんのパーツショップ頑張れ。

しかし、ツバメ返しは厄介だ。ムサシとどちらが強いんだ? そう言えば僕達は、拠点に向かっているんだったな。このままでは、遅れることになりそうだ。

激闘は続いていく。コジローは強すぎる。飛び道具なしでこの強さかよ。あの刀があっては、不用意には飛び込めない。キラーが、この戦いのカギを握っているといっても過言ではない。僕のビームは、コジローに軽くあしらわれる。サツイのロングビームと同時に飛び込むんだ。いけるはずだ。あれっ? 視界が歪む。アイカが心配そうに言う。

「兄さん、大丈夫ですか? ギアをすぐに戻して下さい」

「そんなことしていて、勝てる相手かよ。もう一段、欲しいくらいだ」

「何を言ってるんですか! 休んで欲しいです」

ちぃ、そこまで言うなら二人に任せるぞ。キラーの急接近にも、コジローは慌てる様子もない。メンタル面も相当なものだな。キラーの言う。

「くっ。これがツバメ返しか。カメタはこれと戦っていたのか! 面白い。殺し甲斐がある」

キラーでもきつそうだな。コジローが言う。

「さすがだな。いい戦いが出来た。サツイもなかなかやる」

「馬鹿げたことを。戦いはまだ終わってはいない」

キラーとアイカが、二人がかりで攻めるが、コジローは強い。どうすれば勝てるんだ。

僕はギア六に手をかける。これが最後のギアだ。何が起こるかなんて解らない。行くぞー。気がついたアイカが言う。

「まさか兄さん、止めて下さい!」

そんなこと言ってる場合じゃない。僕は十分休んだよ。二人には感謝しているよ。体が燃える。熱い。頭の中に無数の扉が浮かぶ。暗号なのか? 体への負担は凄い。

コジローが言う。

「凄いなさすが海からの贈り物だ。どれ程のものか、見せてくれ」

キラーが言う。

「ちぃ、掩護するぞ、カメタ!」

キラーが何か言っているが、聞き取れない。僕はどうしてしまったんだ。そうだ、コジローガメを倒さないと……。僕はコジローを圧倒的に押す。コジローが苦しそうに言う。

「くう、オレは諦めない。物干し竿こそ最強の刀だと証明してやる」

コジローの底力は凄い。逆境にも慣れてやがる。僕は、あと一撃が限界か。行けー、変幻!

巨大化した変幻は、コジローガメを貫いた。それと同時に、僕は意識を失う。キラーが言う。

「ライバルを死なせる訳にはいかない。アイカ、急いで撤退するぞ」

アイカが答える。

「はい。キラーさんがとどめよりも兄さんの救出を優先してくれた……。とにかく治療しましょう」

僕は目を覚ましたが、体が熱い。凄い疲労感だ。ギア六は、まだ使いこなせないのか……。父さんはふつうに使っていたらしい。僕はダメだな。アイカが言う。

「兄さん、ギア六は禁止です!」

キラーが言う。

「しかし、あそこで使わなければ、我々がやられていたかもな」

アイカが言う。

「くっ」

これから僕達は、強敵と戦うんだろう。ギア六は必要だ。どうすればいいんだ。とにかく今は休もう。

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