失敗のち成功
易々と見破られ、何故、中にいないことが分かったのかを奈江に聞いてみると、単純明快だった。
「だって、マスター、いつもみたいに笑ってくれないんだもん」
「私達を見ているときのマスターって、とってもハンサムだもん」
「でも、さっきのはブサイクだったわ」
奈江に続けて、由依とゆとりが教えてくれた。つまりは1分動画のクオリティーが低過ぎ、偽物だということがバレたのだ。それほどに、金魚達が僕を見てくれているということでもある。マスター冥利に尽きる。だけどこれでは、何度やっても騙されてはくれないだろう。金魚達にドッキリを仕掛けても無駄なのだろう。それでも、たとえ金魚達の反応を直接見ることは出来ずとも、せめて画面越しにはどうしても見たかった。
もう一度2階へ行き、直接カメラからの映像をテレビに映し出した。手元のパソコンのモニターには、きちんと正座をしている金魚達が映っていた。
ー皆、さっきは良く分かったね。でも、今度は本物だよ!ー
「あわわわわ、本当だ!」
テレビの下に置いていたもう1台のカメラが、驚いて画面を食い入るように覗き込む金魚達の姿を映し出してくれた。金魚達の盛り上がりは、近所迷惑が心配なほどだった。1度は失敗したのにもかかわらず、仕切り直してこの驚きようである。その様子を録画することも出来た。なかなかの傑作である。直接見ることは出来なかったけれど、ドッキリは大成功と言って良い。金魚達が僕を全く疑っていないからこそだろう。このままカメラのことを話さずにいることは、僕には出来なかった。いたたまれないのだ。そこで、ネタをバラすのだが、金魚達は直ぐにカメラの仕組みを理解した。
その後も、騒ぎは続いた。あゆみ、まりえ、優姫の3人を上に連れてきて、3対3でそれぞれを画面に入れた。何度やっても誰一人として飽きることがないようだ。そのうちに、映りを気にする仕草をし始はじめた。お腹が空くまでの数分間のことだが。
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